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【万能#雑記帳】

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[236]spica1004
KY-42C
2026/04/04 21:55
【国東が呼ぶ】文殊仙寺
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岩戸寺から文殊仙寺まではあっという間だ。
「両子寺から行ったら、ぐにゃぐにゃの林道で、いかにも秘境という感じになるのにね」
鏡子さんは″新しくないほうの″駐車場に乗り入れた。
バス停がある。平日に一度だけ来る路線バスの時刻が書かれている。
″昔からある″参道を登る。小仏が見ている。
「一隅を照らす」
その言葉は、ここで響く。
「どこから行く?」
奥の院、本堂、宝篋印塔──。
▽
山肌に貼りつく奥の院。羅漢寺を、両子寺を、思い出す。
「もっと怖がろうよ。もう、俗世には戻れないかもよ」
リアクションに困る鏡子さんだった。
▽
本堂の横に「摩尼車/まにしゃ」があった。
般若心経を唱える代わりに、一回転である。
本堂の階段は急で、スカートなのに先に上がった鏡子さんとは距離をとらなければならない。
俗世に戻って来たんだな。
本堂は狭く感じる。
霊水がある。これも両子寺との共通点である。
口をすすいだ鏡子さんは、本尊に背を向けて、ガラス戸越しに外を眺めている。
ここが本来の鏡子さんのいるべき場所なのだ。
ふと、そう思った。……なぜだか。
▽
宝筺印塔は国東半島最大というが、日本最大ではないのだろうか。
こんな山奥に、これだけの石材を揚げたのだ。
どうせなら大きなものにしたかった──先人達の情熱はわからないでもない。
人間が凄いのか、信仰心が凄いのか。
ただ、信仰は「深さ」であって、「大きさ」ではないと僕は考える。
「とんぼ来て 宝筺印塔 暮れなずむ」
自作の俳句らしいものを、鏡子さんがつぶやいた。
季語から察するに、過去の作品なんだろう。
暮れなずむ──暮れそうで暮れない、そんな時間。
終わりの近いこの旅も、終わりそうで終わらない──だったらいいのだが。

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