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第二放送【雑談・コピペ】

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2026/07/04 07:06

【ショートショート】 過保護の先にあるもの

市井たくりゅう
2026年3月2日 06:01


「あなたは間違っていない」

母は、いつもそう言った。

幼稚園でおもちゃを取り合って泣かせたときも。

「だって先に使ってたんでしょ? 悪くないよ」

小学校で友達とケンカしたときも。

「相手が意地悪だったのよ。あなたは正しい」

先生に注意された日も。

「先生の言い方が悪いの。あなたは悪くない」

世界は、少し理不尽だった。
でも母の前では、必ず整えられた。

ぼくは、正解だった。

中学、高校。

うまくいかないことがあっても、母に話せば必ず答えは同じだった。

「あなたは悪くない」

だから考えなくてよかった。

相手がどう思ったか。
なぜ怒ったのか。
どこで傷つけたのか。
 
そんなことを考える必要はなかった。

だって、ぼくは間違っていないのだから。

社会人になった。

会議で企画を否定された。

「それは違うだろ」

上司が言う。

胸が熱くなる。

“違わない。俺は正しい”

そう思った瞬間、言葉が強くなった。

空気が凍った。

後日、呼び出された。

「君は、自分の意見は言う。でも、人の話を聞いていない」

理解できなかった。

だって、間違っていないのに。

恋人ができた。

些細なことで泣かれた。

「そういう言い方、傷つく」

意味がわからない。

事実を言っただけだ。

「でも本当のことだよ?」

彼女は静かに言った。

「正しいかどうかじゃなくて、悲しかったの」

その言葉は、どこにも収納できなかった。

正しいのに、悲しい?

そんな項目、習っていない。

やがて彼女はいなくなった。

上司からの評価も下がった。



帰省した夜、母に言った。

「なんか、みんな俺を誤解する」

母はすぐに答えた。

「あなたは悪くないよ」

その瞬間、胸の奥で何かがひび割れた。

もしかしたら。

ずっと守られていたのは、
ぼくの正しさじゃなくて、
母の安心だったのかもしれない。

翌日、会社で後輩にきつく当たってしまった。

後輩はうつむき、小さく言った。

「すみません」

もしかして、言い方がキツかったか?

ふと、迷う。

“あなたは間違っていない”

母の言葉が頭の中で浮かぶ。

でも初めて、別の疑問が浮かび上がった。

“この人は、今どう感じている?”

答えはわからない。

わからないまま立ち尽くす。

いつも正しかった正解の子は、
初めて間違いの可能性に触れた。

それは敗北ではなく、
ようやく世界に参加する入り口だった。









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