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2017/02/28 15:54
【SLIPERより】養護教諭が部活動の指導者として校務を任ぜられることについて
最近の「部活動の顧問をしたくない教員が増えている」「ブラック部活動顧問」などのニュースを目にする中で、自ら部活動顧問を担当したいというのは意欲的ですね。養護教諭が部活動の顧問をしている学校は多数あります。しかし、望んで担当しているのか、命令により担当させられているのかは、地域や学校の規模、学校の部活動への取組み方などによって大きく違います。
部活動の位置づけ
1 中学校現行学習指導要領(平成20年〜)では、中央教育審議会答申において、部活動が「中学校教育において果たしてきた意義や役割を踏まえ、教育課程に関連する事項として、学習指導要領に記述することが必要」と指摘されたことを受け、部活動の意義や留意点、配慮事項等を規定している。
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中学校学習指導要領
● 総則第4の2
(13) 生徒の自主的、自発的な参加により行われる部活動については、スポーツや文化及び科学等に親しませ、学習意欲の向上や責任感、連帯感の涵養等に資するものであり、学校教育の一環として、教育課程との関連が図られるよう留意すること。その際、地域や学校の実態に応じ、地域の人々の協力、社会教育施設や社会教育関係団体等の各種団体との連携などの運営上の工夫を行うようにすること。
● 第2章 各教科
第7節 保健体育
第3 指導計画の作成と内容の取扱い
(2) 第1章総則第1の3に示す学校における体育・健康に関する指導の趣旨を生かし、特別活動、運動部の活動などとの関連を図り、日常生活における体育・健康に関する活動が適切かつ継続的に実践できるよう留意すること。
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中学校における部活動は、教育課程外の活動であるものの、学校教育活動の一環として、大きな意義や役割を果たしていると同時に、法律(学習指導要領)の中でもその重要性や価値が積極的にうたわれた。
2 部活動による体罰から生徒が自殺
平成24年12月、大阪桜宮高校の部活動(バスケットボール部)において、主将の男子生徒(17)が、顧問による体罰を苦に自殺をした。
それを受けて、文部科学省は「運動部活動の在り方に関する調査研究協力者会議」を招集、平成25年5月には「運動部活動でのガイドライン」を早急に作成し、教育委員会や各学校に通知をした。体罰を根絶するとともに、部活動を指導する際に考慮すべき基本的な事項、留意点がまとめられた。 具体的な記述も目立つ。
(以下、まとめ。下線はSLIPERによる)
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3 部活動の学校教育における位置付け、意義、役割等について
@部活動は学校教育の一環として行われるものである。
A部活動は、スポーツの技能等の向上のみならず、生徒の生きる力の育成、豊かな学校生活の実現に意義を有することが望まれる。
B自主的、自発的な活動の場の充実に向け、地域の特色を生かして取り組んだり、必要に応じて連携したりすることが望まれる。
4 部活動での指導の充実のために必要と考えられる7つの事項
@顧問の教員だけに運営、指導を任せず、学校組織全体で運動部活動の目標、指導の在り方を考える。
A各学校、運動部活動ごとに適切な指導体制を整える。B活動における指導の目標や内容を明確にした計画を策定する。
C適切な指導方法、コミュニケーションの充実等により、生徒の意欲や自主的、自発的な活動を促す。
D肉体的、精神的な負荷や厳しい指導と体罰等の許されない指導とを区別する。
E最新の研究成果等を踏まえた科学的な指導内容、方法を積極的に取り入れる。
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特に4@では、部活動は顧問の意欲に支えられるところが大きいため、目標、方針等の作成や日常の指導では、健康管理、安全確保、栄養管理等の観点から、体育教師、養護教諭、
栄養教諭等の専門的知見を得ることが効果的であるとされている。
→養護教諭は目標や方針の作成の際、専門的知見が求められている(特定の部活動に限らない)
4Cでは、各教科等での思考力・判断力・表現力等の育成とそのための言語活動の取組と合わせて、部活動で生徒が主体的に自立して取り組むための言語活動への取り組みが期待されている。
→部活動で各教科の身に付けたい力の補強が求められている。
4Dでは、学校、指導者、生徒、保護者の間での十分な説明と相互理解を図ること、生徒の年齢、健康状態、心身の発達状況、技能の習熟度、場所的、時間的環境、安全確保、気象状況等を総合的に考えた科学的、合理的な内容、方法により行うよう明示されている。
→生徒、保護者へのあらゆる観点からの説明が顧問には求められている。
4Eでは、指導者は、効果的な指導に向けて、自分自身のこれまでの実践、経験にたよるだけでなく、指導の内容や方法に関して、大学や研究機関等での科学的な研究、数値等で科学的根拠が得られたもの、新たに開発されたものなど、スポーツ医・科学の研究の成果を積極的に習得し、活用することが求められている。また、そのために、研修や講習の場に出向いていくことが望まれ、各学校は指導者がこれらの研修等への参加する配慮や支援を要請している。学校内や地域の研究会などで、顧問の教員同士で共同して研究したり、研究成果を情報共有したりしていくことも望まれます。
→顧問には、専門的な研究や他校の顧問同士との研鑽が求められている。
→学校がそれを支援することも課せられている。
2 養護教諭の職務内容等について(下線 SLIPER)
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● 学校教育法
第28条 小学校には、校長、教頭、養護教諭及び事務職員を置かなければならない。
7 養護教諭は、児童の養護をつかさどる。
● 保健体育審議会答申(昭和47年)
養護教諭は、専門的立場からすべての児童・生徒の保健及び環境衛生の実態を的確に把握し、疾病や情緒障害、体力、栄養に関する問題等、心身の健康に問題を持つ児童生徒の指導に当たり、また、健康な児童生徒についても健康の増進に関する指導のみならず、一般教員の行う日常の教育活動にも積極的に協力する役割を持つものである。
● 保健体育審議会答申(平成9年)
(養護教諭の新たな役割)
(略)養護教諭は、児童生徒の身体的不調の背景に、いじめなどの心の健康問題がかかわっていること等のサインにいち早く気付くことのできる立場にあり、養護教諭のヘルスカウンセリング(健康相談活動)が一層重要な役割を持ってきている。養護教諭の行うヘルスカウンセリングは、養護教諭の職務の特質や保健室の機能を十分生かし、児童生徒の様々な訴えに対して、(中略)心や体の両面への対応を行う健康相談活動である。(中略)養護教諭については、現代的課題など近年の問題状況の変化に伴い、健康診断、保健指導、救急処置などの従来の職務に加えて、専門性と保健室の機能を最大限に生かして、心の健康問題にも対応した健康の保持増進を実践できる資質の向上を図る必要がある。
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(1) 昭和47年の審議会答申では、日常の教育活動に協力することが確かにうたわれているが、平成9年の答申では、明らかに養護教諭としての専門性に関して資質の向上が求められている。(児童生徒の様々な訴えや表れにより求められる専門性、対応力は変化していく)
(2) 平成20年の中教審答申に基づき、日本学校保健会は平成24年、養護教諭の役割・職務を示すこととなった。冒頭、
・学校保健活動の推進に当たり、養護教諭が中核的な役割を果たしており、現代的な健康課題の解決に向けて重要な責務を担っていること。
・養護教諭の特質として、健康の保持増進に係る職務が広範囲に及んでいること。
・地域性や各学校の実情で、一律とは行かない面もあること。
が述べられている。
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養護教諭の職務内容
1 学校保健情報の把握に関すること
(1)体格、体力、疾病、栄養状態の実態
(2)不安や悩みなどの心の健康の実態 等
2 保健指導・保健学習に関すること
〔個人・集団対象〕
(1)心身の健康に問題を有する児童生徒の個別指導
(2)健康生活の実践に関して問題を有する児童生徒の個別指導
〔集団対象〕
(1)学級活動やホームルーム活動での保健指導
(2)学校行事等での保健指導
〔保健学習〕
保健学習への参加・協力
3 救急処置及び救急体制に関すること
4 健康相談活動に関すること
5 健康診断・健康相談に関すること
定期・臨時の健康診断の立案、準備、指導、評価 等
6 学校環境衛生に関すること
(1)学校薬剤師が行う検査の準備、実施、事後措置に対する協力
(2)教職員による日常の学校環境衛生活動への協力・助言 等
7 学校保健に関する各種計画・活動及びそれらの運営への参画等に関すること
(1)一般教員の行う保健活動への協力
(2)学校保健委員会等の企画運営への参画 等
8 伝染病の予防に関すること
9 保健室の運営に関すること
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昭和47年の答申では「一般教員の行う日常の教育活動にも積極的に協力する役割を持つ」とされているが、日本学校保健会の記述では、「教育活動」を限定した書きぶりとなっている。
3 結論
部活動には、確かな教育観に加え、経験や教育的情熱に頼らない指導力の向上が求められている。今後、東京オリンピック・パラリンピックに向け、その求めはさらに加速されることだろう。
また、部活動には教育的価値や意義が大きいことから、教育活動の一環として位置づけられたのは、だれしもが納得するところである。その教育的効果の大きさゆえに、指導者には研修や研鑽が、管理職や学校の設置者には研修を受けさせる努力義務が求められている。
法律に拘束されつつも、地域や自校の実態に応じて、教育活動を計画するのは各学校である。そのため、校務分掌として部活動の顧問(指導者)に、養護教諭を位置づけ、養護教諭がその役割を担うことは、法的には問題ないと思われる。
しかし、養護教諭が、今後求められる職責の重さや複雑さを鑑みるとき、また部活動の顧問(指導者)が部活動において、子どもたちに、単に運動の技能の向上だけでない、身に付けるべき力を身に付けさせ、成果をあげるためには、養護教諭が養護教諭の仕事も十分に行い、更に部活も行うということは大変な職責となるだろう。
よって、養護教諭自身が、単にその運動種目が得意、やりたいという理由で引き受けない方が良いと考える。ですが、現実には養護教諭が部活の顧問を行なっている場合もあります。今回のSLIPERの見解は一つの見解であり、正解ではありません。一つの見解として参考にしてください。
40歳代/静岡/養護教諭
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2017/02/28 14:53
私も高校で部活動の顧問をしたことがあります。今回はその経験をお話したいと思います。
高校時代の私は吹奏楽部でフルートを吹いていました。先生が部室に来ることはほとんどなかったので、顧問が誰だったかは記憶にありません。50人(女子は10人)の部員はみんな勉強そっちのけで(でも成績優秀者ばかり)練習に明け暮れ、とても楽しかったです。
そんな私も養護教諭になって18年目、高校に赴任することになりました。それも我が母校だったのです。当然、吹奏学部室に足が向きます。驚いたのは部活動の様変わりでした。部員は女子ばかりたった4人。このままでは廃部への道まっしぐらです。つい顧問を引き受けてしまいました。
まず私がしたことは部員集めです。私の身近な生徒といえば保健室来室者、それも常連さん。彼らは部活動をしていない者が多いので、かたっぱしから声をかけてみました。その一人、一年生男子で、4月早々学校近くのゲームセンターで喫煙しているのを見つかり、家庭謹慎処分を受けた生徒がいました。それからも彼は深く悩んで毎日保健室に来ていたので部活に誘ってみました。「やってみようかな」。数日後、彼はクラスの男友を連れてやってきたのです。
こんな調子で保健室から7人が入部。計16名の吹奏楽部員を獲得できたのです。彼はチューバ(大きなバス金管楽器)を担当、貴重な男子部員です。不安と期待を胸に彼の新しい毎日が始まりました。
ところが、話はそうまくいかないもの。昔と違って、今の部員は自分たちだけでは練習はおろか何もできない。挨拶もできないし、理由をつけて、しょっちゅう練習を休む。そのくせ「あれが欲しい、これが足りない」と要求する。無理もない、積極的に部員になった生徒がいないのだから。責任上、私はあれこれ「なだめ」「すかし」ながら彼らを支援しました。
そんなこんなで、チューバの彼も3年間、部員をやりとおせました。初心者ながらアンサンブルコンクールに出場することになったときは、朝早くからチューバの重低音が聞こえていました。チームが銅賞をとった時、みんなで歓喜したのを懐かしく思い出します。
私が顧問をしている間、上司から「ねぎらい」の言葉はいただきましたが、文句やお叱りは受けませんでした。
60歳代以上/海外/元養護教諭
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2017/02/20 19:18
部活動については、その位置づけの曖昧さから議論されてきたところだと思いますが、
東京都では、「東京都立学校の管理運営に関する規則」を
第12条の12 学校は、教育活動の一環として部活動を設置及び運営するものとする。
2 校長は、所属職員(事務職員等を除く。)に部活動の指導業務を校務として分掌させることができる。
と、改正されました。
詳しくは www.kyoiku.metro.tokyo.jp/press/pr130912e/houkoku1.pdf
同時に、特殊勤務手当も見直され
部活動指導手当は4,000円、対外運動競技等引率手当は5200円 になりました。
といっても、都内でも学校や地域によっても実情は様々で、養護教諭が顧問をしているところもあれば、
そうでないところもあります。
また、文部科学省は「外部指導員」の位置づけを明確化し、原則教員に限っていた引率を
指導員もできるように活用拡大し、教員の長時間労働を是正していこうとしていますね。
部活動は、単なる好きな運動や芸術活動をするのみならず、放課後や週末の居場所や友達との繋がり、
教員との親睦や他校の生徒との交流など、情緒的にも進路選択にも影響を及ぼす大変意義のあるものと思います。
教員を目指しているのであれば、今、部活動をめぐり、どんな問題があり、あなたはどんな指導体制が望ましいと思うのか、
自分の考えも持ちつつ、今後の社会や教育の動きにも関心を持ち、注目してみてはいかがでしょうか。
50歳代/東京/養護教諭