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「では別にまだ逃げた犯人がいるのですね。」 「いいえ。」 「ではどうもよく分らないですな。誰がドバルを殺したのです。」 「それを申し上げる前に、少しくわしくお話をしないと、私が余り変なことをいうようにお思いになるでしょう。まずドバルが殺されたのは夜中の四時であるのに、ドバルは昼間と同じような着物を着ていました。伯爵はドバルは夜更しをする癖があるといわれましたが、みんなのいうのを聞きますと、それとは反対に、ドバルはたいへん早く寝るそうです。そうしますと話が合わないで少しおかしくなります。それに僕の調べたところによると、あの名画を写させてくれといった画家は、ドバルの知り人だったということです。それでいよいよ僕はドバルが怪しいと思いました。」 「するとどういうことになりますか?」 「つまり画家とドバルとは仲間でした。それにはたしかな証拠があります。ドバルが手紙を書いた吸取紙の端に『A・L・N』という字があったのを見つけました。電報の名前と同じです。ドバルは名画を盗みとった強盗犯人と手紙のやり取りをしていたのです。」 「なるほど、そして……」判事はもう反対しなかった。 「ですから、逃げた犯人が、仲間であるドバルを殺すはずはありません。」 「そうかしら?」
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