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「しかし僧院の中は円柱が五六本あるばかりで……」 判事は不思議がった。 「そこに潜り込んでいるのです。」とボートルレは力を込めて叫んだ。「判事さん、そこを探さなければ、アルセーヌ・ルパンを見つけ出すことは出来ません。」 「アルセーヌ・ルパン!」判事は飛び上って叫んだ。 有名なその一言に一座はしばらくしんとしてしまった。アルセーヌ・ルパン!大冒険家大盗賊王、眼に見えぬ彼ルパンは空しい大捜索の幾日間を、どこかの隅で傷に苦しんでいる。不敵の敵は本当にルパンであろうか?判事とガニマール探偵とはしばらくじっと動かなかった。 「ごらんなさい。」とボートルレはいった。「彼らが手紙をやった宛名の略字に何とありますか、A・L・Nすなわちアルセーヌの一番初めの文字と、ルパンの名の初めと終りの文字をとったのです。」 「ああ、君は実に偉い天才です。この老ガニマールも負けました。」とガニマールはいった。ボートルレは喜びに顔を赤くして老探偵の差し出した手を握った。三人は露台に出た。そしてルパンが隠れているという僧院を見下した。判事は呟くように、 「してみるとあいつはあそこにいますね。」 「あそこにいます。」とボートルレは重々しげにいった。「銃で撃たれた時からルパンはあそこにいるのです。いかにルパンでもあの時逃げ出すことは出来ないことだったのです。」 「そうするとどうして生きているのだろう。食物や飲物も入るだろうに。」 「それは僕にはいえません。しかし彼があそこにいることは決して間違いありません。僕はそれを断言します。」
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