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最初の二、三日を、心にもなく無為に過したが、ちょうど五日目の晩であった。毎夜のことなので、石工たちも警戒の目を緩めたと見え、丑に近い頃に何人もいぎたない眠りに入っていた。実之助は、今宵こそと思い立った。彼は、がばと起き上ると、枕元の一刀を引き寄せて、静かに木小屋の外に出た。それは早春の夜の月が冴えた晩であった。山国川の水は月光の下に蒼く渦巻きながら流れていた。が、周囲の風物には目もくれず、実之助は、足を忍ばせてひそかに洞門に近づいた。削り取った石塊が、ところどころに散らばって、歩を運ぶたびごとに足を痛めた。 洞窟の中は、入口から来る月光と、ところどころに刳り明けられた窓から射し入る月光とで、ところどころほの白く光っているばかりであった。彼は右方の岩壁を手探り手探り奥へ奥へと進んだ。
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