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再びほんのりとした意識が、還って来る迄に幾日経ったか幾月経ったか、それとも幾年経ったか判らなかった。ただおかんが気の付いた時には、其処に夜明とも夕暮とも、昼とも夜とも付かない薄明りが、ぼんやりと感じられた。右を見ても左を見ても、灰色の薄闇が、層々と重って居た。足下にも汚れた古綿のような闇があった。それを踏んで居るおかんの足が、何かたしかな底に付いて居るのか何うかさえ、彼女には分らなかった。たゞ行手にだけは、右や左や上下などよりも、もっとあかるい薄闇があった。ほの/″\とした光明を包んだような薄闇があった。おかんは左右を顧みないで、たゞ一心に行手を急ぐより外はなかった。
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