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おかんのそうした望みは、到頭実現する時が来た。そうなるまで、幾十里歩いたか、幾百里歩いたか、それとも幾千里と云う長い道路を歩いたか判らなかった。兎に角、行手のほの/″\した闇が、ほんの僅かずつ、薄紙を剥ぐように、僅かずつ白み始めて来た。おかんは、そうなるに従って、尚更足を早めた。老の足の続くかぎり一散に歩き続けた。一歩は一歩ずつ、闇が薄れた。闇の中に、乳白色の光が溢れるように遍照するのを感じた。初は不透明であった光が、だん/\透明になって行くと、それが止め度もなく、明るくなって行って、日輪月輪の光を搗き交ぜたよりも、もっと強い光の中におかんは、ふら/\と立って居る自分を見出したのである。眼がくら/\して、最初は物の相が、ハッキリと見えなかった。が、漸く眼を定めて見渡すと自分の立って居る足下には、燦爛と輝く金砂と銀砂が、鴨川石か何かのように惜しげもなく撒き散らされて居るのを見た。頭上を見上げると、澄み渡った大空の金のさゝべりをとった紫雲が、靉靆と棚引き渡って居た。おかんは、到頭お浄土へ来たのだと思うと、胸の底から嬉しさがこみ上げて来た。
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