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「あら、奥さまは、そんな権利をお持ちにならないはずだわ。」 「おや、どうして……良人のものは、私のものですわ。」 「だって、このお店、前川さんのものじゃないわ。」 「じゃ誰のものです。」夫人は嘲りながら云った。 「みんな新子姉さんのものよ。」 「美和チャン!」新子は、思わず美和子を押えようとした。 「お姉さんなぞ、だまっていらっしゃい!」と、云ってまた夫人に向い、「ここのものは、みんなお姉さんのものだわ。」 夫人は口惜しそうに、ジッと美和子を睨みつめながら、 「だって、みんな前川が買ったものじゃありませんか。」 「お金は、誰から出ているか、私知らないわ。しかし、今では、みんなお姉さんのものだわ。だって、お店の名義は、お姉さんの名前ですもの、そりゃ、みんな前川さんから貰ったものかもしれないわ。でも、貰い物は貰った人のものよ。」 「まあ! 図々しい!」 「図々しいよりも、こんなこと云い合うの、下品だわ。あさましいわ。だから、お姉さんは、だまっていらっしゃるのよ。奥さまが、愚図愚図と云えばだまって出て行くつもりよ。だからお姉さんの方が、奥さまや、私よりも人間が上よ、一言も云わないんだもの。」 「ヒドイ!」 夫人は怒りにかすれた喉声でそう云うと、いきなり立ち上った。立ち上って、扉を押すと、よこっ飛びに階段へ出た。
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