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(今取り込みがありますのよ。資生堂で、しばらくお待ちになっていて下さいませんか、とおっしゃっていましたわ)と、よし子にいわれて、しかも奥を気にするその態度に、そわそわした不安が感ぜられたので前川は、(あ。よし!)と、軽くうなずいて引き返すと、指定されたとおり、一町とはない資生堂まで歩いて、空いたボックスを探して、腰をおろすとアイスクリームを註文した。 取り込みって、何だろう。姉妹喧嘩でも、始めたのであろうか。それとも、姉から妹に移ったという若い音楽家でも、飛び込んで来て、事件でも起したのであろうか、などと今までに例のないことだけに、狐につままれたような感じのなかにも、新子の身を案ずる不安が漂っていた。 だが、十五分とも、待たないうちに、待っていた姉の代りに、美和子が入口に現われ、わざと入口から見えるような位置に腰かけている前川を見つけると、思いの外に元気のいい笑顔で、近づいて来た。 「やア。」と、笑顔で迎えれば、 「のん気な、顔をしてんのね。」と、きめつけられて、 「おや、あべこべじゃないですか。そちらこそ、取り込みがあったというのに、のん気な顔をしているじゃありませんか。」
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