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昨夜、あの時刻に銃声が鳴つたのかしらと思つた。 「素子さんは? やつぱり明日一緒にたつんですか?」 「えゝ、さうするわ。向うでまたいろんなわからないことがあるといけないから……。それやさうと、あなた、どうして、いついらしつたの、こゝへ?」 この問ひには、彼は面喰つた。 「僕? いやだなあ……あの晩、恰度、あの事件の起つた瞬間ぢやありませんか。あなたが二階から降りて来るのを、僕は玄関の入口で見てたんです」 それを聴いて、素子は、眉ひとつ動かさず、 「だから、どうしてそんな時間に、わざわざいらしつたのよ? あなた、その朝、薬師へいらしつたんでせう? 万さんの小屋へ泊つたんですつて?」 「をかしいな、僕、さう云つたぢやありませんか、道に迷つたんだつて……」 素子は微かに声をたてゝ笑つたやうだつた。幾島は本をパタリと閉ぢて、 「しかし、あれから、僕は、あなたと口をきくなんてことが殆どできなかつたから……。僕の方からも訊きたいことがいつぱいあるんだけれども……今はまだよしませうね」 「誰でも、あたしにいろんなことが訊きたいらしいわ。訊かれた、訊かれた、いやになるほど訊かれたわ。あたしつてそんなに秘密がありさうな女にみえて?」 首をかしげて、彼の方を斜に見あげた。 「秘密があるかどうかは知りませんよ。僕はたゞ、僕の知らないことで、あなたが喋つてもいゝことを、ひとつふたつ、聴いておきたいだけです」 <a href="http://tomiget.com/NYTA3/">不労所得で脱サラを目指す元学生パチプロのブログ</a>
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