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この時、一時止んでゐた吹奏楽が、また聞え出す。 女事務員がはひつて来る。 女事務員 先生、あちら、もうよろしいさうでございます。 院長 あ、さう、それぢや……。ええと、お母さんと、お姉さんは、しばらく此処でお待ちを願ひます。麦太郎君、さ、こつちへ来給へ。(起ち上る) 麦太郎 (一寸躊躇するが、にやにや笑ひながらついて行く) 院長と麦太郎が出で去つた後、女事務員は茶など汲み直す。 海老子 もうどうぞおかまひ下さいませんで……。 女事務員 こちらの院長さんとは御懇意なんでいらつしやいますか。 海老子 ええ、ある方の御紹介をいただいたもんですからね。でも、随分お骨が折れませうね。かういふお仕事は……。 女事務員 お好きでなけれや出来ないこつてすわ。あたくしなんか、かうしてをりましても、直接生徒さん方とはどうつていふ関係はないのですけれど、つくづく眼に余ることがございますのよ。かなり良いとこの坊つちやん方もいらつしやるんですけれどね、どういふもんですかね。ぢや、御免遊ばせ。(出で去る) 繭子 どこまでも事務員らしいわね。 海老子 云ふことがかい。
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