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この手紙を手にして、ゲオルクは顔を窓に向けたまま、長いあいだ机に坐っていた。通りすがりに横町から会釈した一人の知人に対しても彼は放心したような微笑でやっと答えただけだった。 やがて彼はその手紙をポケットに入れ、部屋を出ると、小さな廊下を通って父の部屋へいった。もう何カ月かのあいだ、彼はその部屋へいったことがなかった。また、その必要も全然なかったのだった。というのは、彼は父とはいつでも店で出会っていたのだ。二人はある食堂で昼食を同時にとるのだった。晩は、二人とも好きなような行動をするのではあったが、そのあとではなおしばらく共同の居間に坐って、めいめいが新聞を読んで過ごした。もっとも、ゲオルクが友人たちといっしょにいることや、このごろでは婚約者が彼を訪ねることが、いちばん多いのではあった。
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