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こんな晴れわたった午前でさえ、父の部屋がまっ暗であることに、ゲオルクは驚いた。狭い中庭の向うにそびえている壁は、それほどの影を投げていた。父は、亡くなった母のさまざまな思い出の品に飾られている部屋の片隅の窓辺に坐り、いくらか衰えてしまった視力の弱さを補おうとして、新聞を目の前に斜めに構えて、読んでいた。机の上には朝食の残りがのっていたが、その朝食はたいして手がつけられていないように見えた。 「ああ、ゲオルクか!」と、父はいって、すぐ彼のほうに歩み寄ってきた。重たげな寝衣が、歩くときにはだけて、すそがひらひらした。――「おやじは相変らず大男だな」と、ゲオルクは思った。 「ここはまったくかなわないほど暗いですね」と、彼はいった。 「そうだ、もう暗くなった」と、父は答えた。 「窓も閉めてしまったんですね?」 「わしはそのほうがいいんだ」 「そとはほんとうに暖かですよ」と、ゲオルクは前の言葉につけたすようにいって、椅子に坐った。
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