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稽古場に帰って、皆で感想を語り合ったが、私が座員諸君の注意を促したのは、モスクワ芸術座の「どん底」が、想像以上に明るい印象を与えた、ということであった。それはなんのためか? いろいろ原因はあるが、第一に、こういう生活のなかにもあるロシア民衆の底抜けの楽天性である。しかし、この民族的特質は、やはり、ロシアの俳優でなければ、十分に出せないものではあろうけれど、われわれもそのことを頭において、それぞれの人物のイメージを描かなければならぬこと、演出上の配慮もまた、この一点を忘れては大事なものを失う結果になること、であった。だいたいに、日本人のわれわれは、生活の不幸な面、例えば、貧しさとか、病いとか、怒りとか、争いとか、特に死というような場面を舞台の上に描き出す時、必要以上に感情的な表現をする傾向がある。
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