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いくらかの例外はあるが、戯曲がその上演に先だつて活字になることはない。従つて、活字になつた戯曲には、上演記録が附せられ、初演の際の劇場と配役がちやんとわかるやうになつてゐる。 更に注意すべきことは、戯曲の上演による作家の収入である。これは劇作家組合の規定で入場料の十パーセント以上となつてゐるから、大体の想像はつくと思ふ。すこし名前が知れた作家ならば、一年一作で十分生活の保証が得られるばかりでなく、時には、ロスタンのやうに十年計画で一作と取り組み、または、パニヨオルのやうに、処女作のロングランによつて産を成すといふ男も出て来るわけである。尤も、劇作家が興行者なみの投機心を起す危険も、そのためになくはなく、そのこと自体の善し悪しは問題の外であるが、ともかく、小説家にしても、いはゆるブツク・メエカアがないわけではないのだから、その一事を以て、劇作の仕事を不純なりと断じるわけにいくまい。つまり、私の言ひたいことは、戯曲作家も、小説作家の如く、専業が成り立つといふことなのである。
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