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それはさうと、この傾向は、人の名前ばかりでなく、あらゆる場合の命名法にこれと似た傾向があり、例へば官製煙草のおよそ煙草なるものの性格と釣合はぬ取りすました名前を、国民はどう思つてゐるだらう。煙草などといふものは、何処の国へ行つても、気軽でざつくばらんな、といふ風なねらひでおほかた名前がつけられてゐるものである。それでこそ、のんびりとくゆらす煙草の感じがするのである。こゝにもまた、「平衡」を失した、わかり易く云へば、ピントのはづれたなにものかがあると云はねばならぬ。 そこへ行くと、昔の日本人は、いゝ感覚を具へてゐたやうである。商店の屋号も、近頃のそれとは段違ひに落ちついた、渋い、なにげない、従つてゆかしいものであつた。もちろん時勢のためでもあるが、わが国の民主主義はこの感覚を踏みにじつてしまつたかの如くである。
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