コピー
家主のお神さん、T夫人が、その後、私を彼女の物置に案内して、古い額などを見せた時、「こんなものが……」と云つて、埃の中からつまみ上げたのが、今、私の所有に属してゐる鉄側で、夫人のお父さんが、そのまたお父さんから譲り受けた品物であるといふだけでも、明かにロマンチック時代のあの懐しい面影を伝へてゐることがわからう。 この鉄側は、しばらく、一本の短針だけで、大体の時間を知らせてゐたが、今は、それすら動かなくなつてしまつた。末弟が時計屋に持つて行つたら、大変珍しがるので、そんなに値打がある代物かと思つて、値ぶみをさせてみたら、笑ひながら、値段のつかないほど珍しいものだと云つたさうである。只なら欲しいといふ意味だらう。
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