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「だから、ハギのいうとおりになさればよかつたのよ。でも、大丈夫よ、少し伸びて来ればわかるわ。これでも、草花は多少、自信があるのよ」 「あゝ、その方はハギに委せるよ。僕は、専ら生産的な方面を受持つことにする。但し、野菜なんか、あらまし買つたつて間に合うんだからね。そんなに一生懸命にやる必要ないよ」 「まず予防線を張つておいて……。そうよ、お百姓は無理よ。青いものが少し取れゝば、畑はそれでいゝわ」 そう言いながら、小萩の表情は急に引きしまり、眼で彼に合図をしたので、彼は、表の方をふり返つた。 「どうもこの家らしいと思つた」 南条己未男が、片手を挙げながら、崖の階段を登つて来た。そして、すぐうしろに、妹の真喜が、ちよつと照れたような笑顔をまともにこつちへ向けて、ついて来るのである。 「差支えないかい?」 と、南条己未男は、ちよつと小萩の方に会釈をした後、彼のそばに寄つて、たずねた。 「ふむ、これは意外だ。もちろん差支えないが、真喜が一緒というのは、どういうんだい? まさか、もう結婚したんじやあるまいな」 京野等志は、実際、そうとでも言うより、挨拶のしようがなかつた。
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