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「結婚なんか、まだしないわ、ねえ、南条さん……。あたしたち、お友達になつたばかり……。だつて、南条さんが、兄さんを訪ねるつていうのよ。あたしも、すこし、お話があるから、連れてつてと頼んだの。それだけよ」 「もつとも、そう頼まれたのは光栄だと思つてるがね。とにかく、前触れもしないでやつて来てよかつたかどうか……」 そう言つて奥に眼をやる南条己未男の視線から、小萩はもうとつくに姿を消していた。 「兄さん、今の女の方、どなた? あたし、見たことあるようなひとだわ」 と、真喜が、やはり、奥の方をみながら、言つた。 「それやそうだろう。お前の知つてるひとだよ」 「小萩さんでしよう、そんなら……」 「その通り……今、病気なんだ。よくわかつたな」 「へえ、そうか、かつての小萩さんか、あれが……。すつかり変つたじやないか」 どちらも、その昔、会つたことがあるだけに、詳しい説明はいらなかつた。 小萩に合わせたものかどうか、一応彼女の意向をたしかめるつもりで、京野等志は、部屋にはいつた。
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