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「うゝん、時々、アパートへ会いに来てくれるの。お店の前をのぞき込むようにして通りすぎることもあるのよ。あたし、見つけたら追つかけてつて、お茶おごつてあげるの」 「そいつはいゝな。多津はどうしてる、その後……?」 「ああ、多津姉さんね、やつぱり雲井さんと別れるんですつて……。それから、ほら、仲よしだつた鷲尾妙子つていう女流作家がいるでしよう。あのひととも喧嘩しちやつたんですつて……。今、なんだか知らないけれど、行商つていうのか、外交員つていうのか、そんなことしてるわ」 「なんだい、お前の相談つていうのは?」 「うゝん、なんでもないこと……母さんはお父さんと別れちまつたらどうかと思うのよ。だつて、くだらないでしよう、あんな生活は生活つて言えないわ」 京野等志は、この少女の意見が、いつたいどこから出て来たものかを疑わないわけにいかなかつた。
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