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終つたはずの戦争が、こゝにもまだ長く尾を引いているのに彼女はりつ然とした。 「どちらへ?」 と、若い女は、しばらくして康子に声をかけた。 「あたくしたち? ワッカナイですの、北海道の果ですわ」 「わたしたち、樺太からやつと引揚げたばかりなんですけれど、また、行けるようになつたら行こうと思つて……」 「それで? 今からどこまでいらつしやるの?」 「どこでもいゝんです。すぐ渡れるようなところへ行つて、待つてますわ」 「お連れがおありになるの?」 「えゝ、わたしたち三人……」 見ると、なるほど、そのそばに背中を丸めて居眠りをしている二人の女がいた。いづれも二十そこそこの小ぎれいな娘たちである。 「感心ね。おくには?」 「みんな違うん」 と、あとはふくみ笑いでまぎらしてしまう。いずれはこびを売るたぐいの女たちであろうと、康子は察した。しかし、彼女の心はちつとも痛まなかつた。
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