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康子は、つりこまれて笑いながら、 「聞きたいんだけど、どこを聞いていゝかわからないわ。かいもく見当がつかないんだから……。こういうところ知つてなさる?」 そこで、ハンドバッグから手帳をとりだし、中園三郎の住所のところを読みあげた。 「知らん、わたし」 と、素ッ気なく、その娘はこたえた。 「あんた、それでも、ワッカナイは二年もいたくせに……」 「だつて、それ、ワッカナイじやないもの。そんな会社の名前、わッし聞いたことないわ」 「なんでもワッカナイからずつとはいるらしいのよ。どつちへだか……。海岸なんですつて……さびしい、さびしい……」 「海岸はどこだつてさびしいよ」 と、その娘は、また、投げだすように言い、 「いつそ、ワッカナイまでのすか?」 「いつしよに行つてちようだいよ、ほんとに……」 康子は、この道づれを失うまいと、せい/″\親しみをこめた調子で誘つてみた。
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