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将校が旅人に歩み寄った。 旅人は予感めいたものがあって、一歩後に下がった。 将校が旅人の手をつかんで、そばに引き寄せた。 「あなたを見込んで、ちょっと話をしたいのですが、よろしいですか?」 「ええ。」 旅人は目を伏せつつ、話に耳を傾けた。 「この裁判制度と処刑に、今回立ち会うことができたことを、旅人さん、あなたは感謝すべきですよ。しかし、この地にはもはや、高らかに支持を表明する人はいないものと思われます。私が唯一の代表者かつ、先の司令官の意志を継ぐ唯一の人間であるのです。この裁判制度をこれ以上広めようなどとは、考えない方がいいでしょう。今は、ここの制度と機械を維持するだけで精一杯なのです。先の司令官が存命中には、この地にも支持者がたくさんいました。彼の思想的側面は、私もいくらか受け継いでいるつもりなのですが、いかんせん、私には権力というものがありません。その結果、支持する者がいても、私に力がないために、彼らを守ってやることができない。だから大勢いても、みんなそのことを口に出さないのです。たとえば今日、処刑執行の当日に、喫茶店に行って色々話を聞いて回ってご覧なさい。みんな曖昧なことを言うばかりですよ。みんな以前は大声で支持していたのに、現在の司令官の下、新しい考えがはやっている現在では、まったく役に立ちません。これをどう思いますか? ああいう司令官と、それを意のままにするご婦人方のせいで、このような一個の生涯をかけた作品が――」
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