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山の幸、海の幸にのみ活きておった太古の状態から、次第に進んで世の中の秩序も整頓し、住人にも一定の株が出来ては、他国者や風来人がやって来て、住み着こうとしても容易な事ではない。中には京都の北の八瀬の様に、絶対に他村者をすら入れぬという頑固なところもある。よしやうまく住み着いて、職業上交際上、平素あまり区別のない程にまで融和が出来ても、なお縁組などの場合には、「筋」が違うからという故障がいつまでも起って来る。今日の様に通信交通が便利で、その素性も、移って来た理由も容易に明らかにされる時代とは事が違って、どこの馬の骨やら、人殺しをして逃げて来たのやら、本人の口上以外にサッパリその潔白を証拠立てる事の出来ない世の中には、玉石混淆してまずこれに深入りしなくなるのに無理はない。
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