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私がいわゆる部落の人々に近づき始めたのは、すでに二十余年の昔となりました。それまでは私も、あえてこの問題について研究したことはなく、もちろん部落の人々が、どんな境遇に苦しんでいるかをも深く考えてみたこともなかったのであります。しかるに私は、歴史家としての私の社会史研究上の必要から、いわゆるエタ非人に関する材料を求めようとし、しばしばこの方面の人々に近づく機会ができました。そしてその生活状態を観察し、不平不満の語を聞きますと、これはいかにも気の毒なものだと、同情の念が自然と起らざるをえなくなったのであります。のみならず、さらに進んでその部落の起原沿革を研究しまして、歴史上少しも差別すべきはずのものでなく、ただ世人の無智がこの人々をはなはだしく苦しめているのだとのことを確信するようになりましては、これは到底自然のなりゆきにのみまかして、打ちやっておくべきものでないと考えました。
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