コピー
兵士はもう機械の掃除を終えて、お粥を缶から出して小鉢の中にそそいだ。 囚人はそれに気がつくと、もうすっかり元気になったようで、すぐに舌をのばしてお粥を食べようとした。 兵士はまたもや囚人を押し止めた。お粥はもっと後になってからと決まっていたからだった。だが、あろうことに、兵士自身が汚れた手をつきだして、空腹の囚人の目の前で、お粥を食べ始めた。 将校は、まもなく我に返った。 「その、あなたを感化しようとか、そういうことではないのです。わかってます、無理ですよね、今、これだけで納得していただこうなんて。それはそうと、機械はいぜん動いておりますし、たとえこいつだけでも、ありさえすれば、動くのです。谷の中にぽつんとこの機械が置いてあるだけでも、こいつは自分で動くのです。ちゃんと最後に死体が、この世のものとは思えないほど安らかに穴へ落ちていくのです。過ぎし日のように、大群衆が穴の周りにひしめきあっていなくとも。昔はね、穴の周りに頑丈な柵を設けなければならなかったんですよ、もうとっくに取り払われましたけどね。」 旅人は顔を背けて、あてもなく辺りを見回した。 荒涼とした谷に見入っていると思ったのか、将校は旅人の手をつかんで、注意を自分の方に向けようとした。
TOPに戻る
-
iboard BASIC
-