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「もっと大きな声で」と彼は頭を垂れたままささやいてから、恥じた。自分には聞き取れないけれど十分大きな声で言われたのだ、ということを知っていたからである。そのときとうとう、眼の前の壁に穴があいたように、さわやかな風が吹きつけてきた。そしてそばで言う言葉を聞いた。 「初めは行きたがるが、ここが出口だ、と何回でも言ってやればいい。そうすれば動かなくなるよ」 Kは、娘があけた出口の扉の前に立っていることに気づいた。身体じゅうの力が一時に戻ってきたような気がし、自由の身の前味を味わうのだった。すぐに階段に一段足をかけ、そこから、自分のほうに身体をかがめている二人の道づれに別れを告げた。 「どうもありがとう」と、彼はまた言い、繰返し二人の手を握ったが、二人が事務局の空気に慣れていて、階段からやってくる比較的さわやかな空気にも耐えがたそうなのを見てとって、初めて立ち去った。二人はほとんど返事もせず、もしKがきわめて素早く扉をしめてやらなかったならば、娘はおそらく倒れたであろう。
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