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403.米原

>>402「そこに座って」

 そう命じる静かな声音はどこか冷たげで、俺は被虐感にゾクゾクとしながら腰を下ろした。
 床に座した俺を見下ろす茜の瞳はどこか恍惚とした色に染まっているように思えた。
 脚を開くように指示され、俺は黙ってそれに従った。
 M字に開いた股へと、茜の細い脚が伸ばされる。
 ペニスに触れた彼女の素足は、ほんの少しひんやりとしていた。
 その冷たさが、包茎に触れているのは足なのだと実感させる。

 茜はゆっくりと押し潰すように右足に体重を掛けていった。
 彼女の足の下で、包茎がビクビクと大げさな程に脈を打つ。

「どう?」

「ど、どうって……うう……おちんぽがムズムズしてくる」

「ムズムズしちゃうんだ。変態だね」

 茜の足が包茎から離れた。
 足を用いた責めはこれで終わりなのだろうか、と思っているところに、軽い蹴りが飛んできた。
 いきり立った包茎が大きく揺れる。

「あううっ……」

 俺は情けない声を上げながら、茜の顔を見上げる。
 平気な顔をして男の生殖器を足蹴にする彼女に、俺は興奮してしまった。
 そんな状態の中、包茎をもう一度蹴られる。
 痛みと呼べる程の刺激ではない。精々乱暴に弄ばれていると言ったところか。
 包茎はその被虐的な悦びに打ち震えて、包皮に我慢汁を滲ませる。
 茜はつま先をそこへやって、親指で包皮の先端を撫で付けた。
 こそばゆい感覚に、俺は腰をガクガク言わせながら、喘ぎ混じりの吐息を漏らした。

「ふふふっ。足で虐められるだけでこんなに濡らしちゃうなんて、悪い子」

 咎めるような言葉を放ちながらも、その顔色は嬉々としている。
 それ見上げて、俺は思わず口走っていた。

「良かった……」

 俺の腕の中で死ねるのなら、そう言った時の暗い影はもう見当たらなかった。
 そんな心情が顔に出ていたのだろうか。
 茜はペニスから足を離して言う。

「いま優しい顔をするなんて、ずるい」

「……すまん」

 膝を着いた彼女は、四つん這いの格好で俺に近付いた。
 頬を小さく膨らませた可愛らしい顔が、間近に迫り、俺は胸を高鳴らせた。

「仕切り直し……」

 彼女の唇が俺のそれに触れる。
 何度か軽いキスを交わした後、どちらからともなく舌を伸ばす。
 舌を絡ませ合い、湿った音を響かせる。
 触れ合う舌先が甘く痺れていく。
 
 キスは次第に激しくなっていった。
 互いに貪り合うようにして、口付けを交わし続ける。
 その心地良さに思考は蕩けていった。
 ゆっくりと唇を離してから、茜は小さく火照った息を漏らした。
 彼女の顔には官能的な色が滲んでいた。
 
 じっと俺を見つめたまま、茜が木箱を手繰り寄せる。
 そこから取り出した首輪を俺に掛けた。
 首輪から伸びるリードを引いて、茜は笑みを浮かべた。
 全裸の男に首輪を着けて愉しげな顔をする美少女。興奮するなと言う方が無理だ。
 俺はガチガチに勃起した包茎を脈打たせながら、茜へにじり寄る。
 それをさらりといなして、彼女は立ち上がった。
 俺を見下ろして、一言。

「そうしていると、犬みたいだね」

 俺は背筋がゾクゾクと震えるのを認めた。
 振るべき尻尾が無い俺は、替わりに我慢汁を滴らせた。
 その反応に何か感じるところがあったのか、茜は俺の眼前に手の平を差し出しながら言った。

「ペロペロしてみる?」

 言葉で答えず、俺は彼女の手に口を付けた。
 汗だろう。少し塩っぽい味がした。
 俺に手の平を舐めさせながら、茜はくすっ、と笑い声を漏らした。

「くすぐったい」

 そう言いながら、リードを強く引く。
 俺は徐々に腰を浮かせながら、舌を這わせ続けた。
 手首、肘、二の腕。
 俺の舌がそこまで至ると、彼女は腕を上げた。
 透き通るように白い腋が露になった。
 薄っすらと滲んだ汗が輝く様に、俺は劣情を禁じえなかった。
 ちゅっ、とキスをしてから舌を這わせる。

「んっ……ふふ……」

 こそばゆさから発せられているであろう笑い声が、どこか淫靡に聞こえてならない。俺は夢中になって彼女の腋を舐めしゃぶった。
 その興奮は、先走り汁が床に水溜りを作り出す程だった。
 
 不意に首輪が強く引かれる。
 これを「口を離せ」の意だと受け取り、俺は顔を上げた。
 火照った顔を朱に染めている茜と目が合う。

「エッチなワンちゃんには……躾が必要だね。おすわり」

 ワンッ、とは鳴かなかったものの、俺は素直に従った。
 茜は、その姿を見下ろして満足げな笑みを浮かべた後、箱から新たな道具を取り出した。今度は一体なんだろうか。
 格子状の拘束具に見えるそれは、ちょうど非勃起時のペニスが収まるであろう大きさだった。

「足、開いて」

 促されるままに股間をさらけ出して、包茎を差し出すように腰を浮かせる。
 ひんやりとした拘束具があてがわれる。
 包茎おちんちんはこれ以上なく勃起している。もちろん入るはずがない。

「小さくしないと駄目みたい。どうしようか、郡山くん」

「どうしようかって……どう小さくするのかってことか?」

 茜は黙って頷いた。

「そりゃあもちろん、射精させてもらえるのが俺としては一番良いのだが」

「分かった」

「え?」

 SMプレイだというからには、射精は散々焦らされて然るものだと思っていた。
 普通のエッチなことはそっちのけで、鞭でビシビシやられたり、豚だのゴミだの罵られたりするのでは、と。
 ぽかん、としている俺に対して、茜は小さくウインクをして見せた。可愛い。
 彼女の細い腕が、股間へ伸びる。
 手コキが行われるであろうことを予期して、俺は快楽を期待するが、与えられた刺激は違っていた。
 乾いた音が部屋に響く。

「あうっ……!」

 俺は包茎にビンタを喰らっていた。
 平手は、左右から交互に包皮を打つ。
 ぺちっ、ぱちっ。
 揺れる肉棒は、痛みと快楽を同時に味わわされ、見っとも無く先走り汁を撒き散らす。

「うっ、あうう、あっ、茜……」

「なあに」

「くふっ、うう……きっ、気持ち良い……」

「ふふ、知ってるよ」

 そうか。以前にもこうしてチンポにビンタを受けたことがあった。
 あの時は結局、フェラチオで果てさせてもらったが、今度はどうなることやら――などと考えていると茜が言った。彼女も同じことを思い出していたのだろうか。

「ねえ? また口でしてあげようか?」

 自然と目線はその可憐な口元へと向いていた。
 小ぶりながら艶々として鮮やかな唇が、小さく歪む。淫らに誘うような笑みに、俺は呆けたような顔をしながら、こくこくと頷く。

「分かった」

 言うなり、彼女は身を屈めた。
 かき上げた髪を耳の近くで押さえながら、包茎へ顔を寄せる。
 ふ、と吐息が包皮に触れた。

「やっぱり、やーめた。叩かれて気持ち良くなっちゃう変態おちんちんには、これで充分だよね?」

 一瞬俺を見上げた後に、彼女は唾液を滴らせた。

「あふっ……」

 生温かな体液を敏感な包皮に垂らされ、俺は堪らずに呻き声を上げていた。
 たっぷりと唾液を落してから茜は顔を上げた。

「郡山くんのおちんちん、私の涎でびちゃびちゃになっちゃったね」

 男根は、妖しく濡れ光りながら律動している。
 俺は荒々しい呼吸をしながら、己のペニスと彼女の顔を交互に見やった。
 少女の美しい顔と唾液まみれの男根。二者の対比に興奮する俺の様子に、茜は笑みを零した。

「ふふ、舐めてもらえて残念? それとも興奮しちゃった?」

「こ、興奮する」

 俺が答えると、彼女は笑みを深めて男根に手を伸ばした。
 しなやかな指が肉の幹にあてがわれる。
 指先で裏筋を撫でられ、俺は身を震わせた。

「指一本で触られても感じちゃうの?」

「感じちゃうぅ……」

 俺は自分でも驚くほどに間抜けな台詞を口走った。
 くすくす。
 どこか小ばかにしたような笑い声に、倒錯的な興奮を覚えてしまう。
 茜はしばしの間、笑いながら指先一つで肉棒を弄んでいた。
 不意に手が止まり、彼女が俺を見つめて言った。

「可愛い」

 胸が一つ大きく高鳴った。

「もっと意地悪なことをしたくなっちゃう」

 茜のそんな言葉に、俺は背筋をゾクゾクと震わせて、頭の中が真っ白になっていくような感覚に襲われていた。
 そこへ刺すような痛みが与えられる。
 見ると、茜が指先でペニスを弾いていた。

「あううっ、う、ああぁ……」

 容赦なく連続して与えられる痛みに、俺は腰を引いてしまう。

「逃げないで」

 甘えるようでありながら、高圧的な声音だった。
 俺は一瞬、どうして良いのか分からないような心地に陥るも、結局は自ら生殖器を差し出していた。

「良い子」

 言いながらも、茜は男根を指で虐げ続ける。
 痛みは徐々に快感へと変じていった。
 パンパンに張った包茎の先から、我慢汁が滲み出す。
 腰は自然と小刻みに揺れ、その最奥から熱い物がこみ上げてくる。

「あっ、茜っ、はあっ、ああ……もう……」

「こんなのでもイッちゃうんだ? ……郡山くんのおちんちん、馬鹿になっちゃったのかな」

 茜はそう俺を罵りながら、一際力強くペニスを弾いた。
 包皮の裏に伸びる筋――陰茎小帯が指先によって打たれる。
 快感は、包茎から全身へと弾けるように広がり、俺は果てた。
 ぶびゅっ! びゅるっ!
 大きく脈打つ男根から、精液が迸り、俺はその悦びに蕩けた表情を浮かべた。
 
 肩で息をしながら茜へと視線を向ける。
 ボンテージ姿の彼女は、官能めいた顔付きで、俺を見つめていた。
 突然、リードが強く引かれる。
 そうして手繰り寄せた俺の身体を彼女はぎゅっと抱き締めた。
 露出した肌は幾ばくか冷たくなっていた。

「大丈夫、痛くなかった?」

 優しい声音。艶やかな髪から漂う女の子らしい香り。
 俺は切なさに似たときめきを覚えつつ、口を開いた。

「痛かったけど、気持ち良かった……」

 何とも間抜けな返しだ。
 今の彼女には、男を間抜けに、骨抜きにしてしまうような母性的な魅力があると俺は感じていた。
 先に散々虐げられたせいだろう。
 粗暴な振舞いの者が誠実な行いを見せた時、その意外性ゆえに強い印象を与えるのに似ている。
 射精を経て落ち着きを取り戻した思考はそんな分析を勝手に始めていたが、頭をゆっくり撫でられるとどうでも良くなってしまう。
 俺は彼女の名を口にしながら、その身に強く抱き付いた。
 
 しばしそうして、抱き合った後、茜は言った。

「また勃起しちゃう前に、これ着けちゃおうか」

投稿日時:2019/03/14 20:18

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