分からぬは夏の日和と人心
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2013/10/27 16:48
いわゆる夏日は流汗し冬日は亀手する底の百姓の娘が美顔料など買って行く愚かさもさることながら、私はかかる貧乏人の無知なる女を相手に高価なぜいたく品を売り付けて金もうけすることも、ずいぶん罪の深い仕事だと感じた。
友人の話というはただこれだけの事である。そうして私はこれ以上具体的の話をするつもりはないが、ただひそかに考うるに、いかに営業の自由を原則とする今の世の中とはいえ、農工商いずれの産業に従事するものたるを問わず、すべて生産者にはおのずから一定の責任があるべきはずだと思う。
私は金もうけのために事業を経営するのを決して悪い事だと言うのではない。多くの事業はいかなる人がいかなる主義で経営しても、少なくとも収支の計算を保って行く必要がある。
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2013/10/27 16:48
私は今具体的に商品や商売の名を指摘して、多少にても他人の営業の邪魔をする危険を避けるつもりであるが、ただ一つ、今年の夏四国に遊んだおり、友人から聞いた次の話だけ、わずかにここに挿入することを許されたいものだと思う。
このごろ婦女子の間に化粧品の需要せらるることはたいしたもので、これを数十年前に比ぶれば実に今昔の感に堪えざる次第であるが、ある日のこと、自分は所用あって田舎町の雑貨店に立ち寄っていると、一人の百姓娘が美顔用の化粧品を買いに来た。見ていると、小僧はだんだんに高い品物を持ち出して来て、なかんずく値の最も高いのを指さしながら、これは舶来品だから無論いちばんよくききますなどとしゃべっていたが、その田舎娘はとうとういちばん高い化粧品を買って帰った。
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2013/10/27 16:45
私はすでに前回の末尾において、富者はその財をもって公に奉ずるの覚悟がなくてはならぬと言ったが、かく言うことにおいて、私の話はすでに消費者責任論より生産者責任論に移ったわけである。
私はかつて、需要は本で生産は末であるから、われわれがもし需要さえ中止したならば、ぜいたく品の生産はこれに伴うて自然に中止せられ、その結果必然的に生活必要品の供給は豊かになり、貧乏も始めて世の中から跡を絶つに至るであろうと述べた。それゆえ私は消費者――ことに富者――に向かってぜいたくの廃止を説いたのであった。しかしさらに考えてみるといかに需要はあっても、もし生産者においていっさいのぜいたく品を作り出さぬという覚悟を立つるならば、それでも目的は達し得らるべきはずである。
世間にはいくらでも需要のある品物で、それを作って売り出せば、たやすく一掴千金の金もうけができるにもかかわらず、いやしくもその品物が天下の人々のためにならぬ性質のものたる以上、世の実業家は捨ててこれを顧みぬという事であれば、私の言うがごとき現代経済組織の弊所もこれがため匡正せらるること少なからざるべしと思う。それゆえ私は論を移して、消費者責任論より生産者責任論に進むのである。
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2013/10/16 21:10
万事は、自分の知っている限りでは、ほんとうにうまく終ったのだが、それからあんな事故が起ってしまった。しかし、その前に起ったことを考えてもらえれば、そんなことをだれもほとんどこの自分の罪には数えることができないはずだ。残念なことに、ただエルランガーとビュルゲルとだけしか自分のそんな状態を知っていなかった。あの二人の人ならそういうこちらの状態を考えてくれ、あれから起ったようなすべてのことを防いでくれたことだろうが、エルランガーはおそらく城へいくためだろうが、聴取のあとですぐ出かけなければならなかったし、ビュルゲルはおそらくあの聴取に疲れて果てて――だから自分もまいってしまわないで頑張り抜くことがどうしてできただろうか――眠りこんでしまい、あの書類配分のあいだもすっかり寝過ごしてしまったくらいなのだ。もし自分がそれと同じように眠ってもよかったならば、自分はその機会をよろこんで利用して、禁じられているのにあんなふうにかいま見るというようなことはすべて断念したことだろう。断念するということは、自分はほんとうはねぼけまなこで全然ものを見ることができなかったくらいだから、いっそうたやすかったのだ。だから、あの神経質な人びとも何一つはばからずに自分の前に姿を見せてもよかったのだ。
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2013/10/16 21:09
一回はビュルゲルのところで、二度目のはエルランガーのところでだった。ことに最初のですっかり疲れてしまった。もっとも二度目のはあまり長くかからなかった。エルランガーは自分にちょっとしたことをやるようにと頼んだだけだ。しかし、二回の事情聴取を同時に受けるということは、一度にもちこたえることができる以上のものだ。おそらくあんなふうなことは、ほかのだれか、たとえばご亭主にだってやりきれたものではなかったことだろう。二度目の事情聴取を自分はやっとの思いでふらふらになって終えたのだ。あれはほとんど一種の酔ったような状態だった。実際のところ、自分はあのお二人にはじめて会い、はじめてお話を聞いたのだが、あの人たちに答えることさえしなければならなかった。
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2013/10/16 21:09
彼はこの夫婦があの不快きわまる場面にけりをつけてくれたことに感謝し、もし自分に釈明が要求されるならば、それはとても歓迎すべきことだ、というのは、そうすることによってだけ自分のふるまいに対する一般的な誤解を防ぐことができるのだ、と述べた。ただ疲れのせいで、それ以外のことに責があるわけではない。ところでこの疲れは、自分が事情聴取の緊張にまだ慣れていないということからきている。自分はなんといってもこの土地へきてからまだいくらにもなっていない。これからこの点でいくらか経験をつめば、あんなことはもう二度とは起こるはずがないだろう。おそらく自分は事情聴取をあまりにまじめに考えているのかもしれないが、それはきっとそのこと自体としてけっして欠点ではないはずだ。自分は二回の聴取をつづけざまに受けなければならなかったのだ。
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2013/10/16 21:09
また彼ら自身も夜なかに驚かされたこと、早く起きてしまったことで、疲れていた。ことにおかみはそうで、絹のようにさらさら音を立てる、スカートの広い、茶色の、少ししどけなくボタンをかけてリボンをつけた服を着ていたが――あの火急の場合にどこからそんなものを取り出してきたのだろう?――頭を折られてしまったように夫の肩にもたれかけ、きれいなハンカチで両眼をたたき、そうしながらも子供らしい悪意のこもった視線をKに向けていた。この夫婦をなだめるため、Kは、二人が自分に今語ってくれたことはすべて自分にはまったく耳新しいことだ、だがそういうことは知らなかったけれどもそう長く廊下にいたわけではない、実際、あの廊下に何も用事があったわけではなく、またけっしてだれかをわずらわそうなどと思ったのではなくて、あんなことはすべて過度の疲れから起ったことなのだ、といった。
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2013/10/16 21:09
こうしているうちに、三人は酒場へきていた。亭主がひどく怒っているのにもかかわらず、なぜKをここまでつれてきたのかは、まったく明らかでなかった。おそらく亭主は、Kがひどく疲れていて、この家から出ていくことはさしあたりできない、と見てとっていたのだろう。そこに坐るようにとすすめられることも待たずに、Kはすぐ樽の一つに文字どおりくずおれてしまった。その暗がりのなかでは、彼は気持がよかった。その大きな部屋には、今はただ光の弱い電燈一つだけがビールの栓の上で輝いていた。外もやはりまだ深い暗闇で、吹雪のようだった。ここでこんなに暖かくしていられることは、ありがたいと思わなければならないし、追い出されないように用心をしなければならない。亭主とおかみとはなおも彼の前に立っていた。まるで、Kという人間が今でもまだ一種の危険を意味するかのようであり、この男はまったく信用できないのだから、突然起き上がって、また廊下へ侵入していこうとすることもありえぬことではない、というようであった。
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2013/10/16 21:08
あのかたたちが助けを呼ぶなんて! 亭主もおかみもこの宿のすべての雇い人たちも、ずっと前にかけつけていたら、もし呼ばれもせずに、朝、ただ手伝いしてすぐ立ち去るためだけであっても、あのかたたちのとこへ思いきって現われていさえしたら、どんなにかよかったことだろうに。Kに対する怒りに身体をふるわせながら、また自分たちの無力に絶望しながら、彼らはここの廊下の入口に待っていたのだ。そして、ほんとうはけっして期待していなかったベルの音が自分たちにとって一種の救いとなったのだ。ところで、最悪のことはもう過ぎ去ってしまった! あなた、つまりKが、ついにあなたから解放されたあのかたたちのよろこばしげな仕事ぶりを一眼でも見ることができたらいいんだが! むろん、Kにとっては万事もう終ってしまったわけではない。自分がひき起こしたことに対してきっと責任をとらなければならないだろう。
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2013/10/16 21:08
夜間聴取の助けを借りてあの人たちが幸いにも切り抜けてきたもの、つまりあの人たちにとってまことに耐えがたい陳情人たちをながめるということを、今、朝となって、突然、ありのままにむき出しの姿で改めてしいられたくはないのだ。あの人たちはそういうことをやれる人たちではない。このことを顧慮しないとは、なんという人間だろう! そうだ、そんなやつはKのような人間であるにちがいない。掟であろうときわめてありふれた人間的な思いやりであろうと、なんだってこんな鈍感な冷淡さと寝ぼけまなことですっかり見すごしてしまう人、書類配分をほとんど不可能にし、この家の名声を台なしにしてしまい、そしてこれまで起ったことがないようなことをやってのける人なのだ。あの絶望させられてしまったかたたちがみずから自分の身を守ろうとし始め、普通の人間たちには考えられないような自制のあとでついにベルに手をかけ、ほかの手段ではどうしても動じることのないKを追い払うために助けを呼ぶなどということは、それこそこれまでに起ったことがないようなことだ!