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383.米原
>>382当事者である樫田を半ば差し置いて、対立は続く。
「劣等生に、それ相応の措置を取って対処する。それがそんなにおかしい事かしら?」
貝塚の声色はどこまでも淡々としていた。
「いいえ。対処すること自体は何の問題も無いと思います。ただ、やり方がおかしいんじゃないですか?」
対する弥生の声は、ほんの僅かに震えていた。
義憤に駆られて立ち上がったとは言え、真正面から教師に歯向かっているのだ。
学園と言う小さな枠組みの中で、それがどれだけ勇気の要ることか。
弥生の言葉を受けて、貝塚はしばしの沈黙の後、口元を歪めた。
「……そこまで言うなら聞かせて貰えるかしら? 菅野さんが考える正しいやり方って一体どんなもの?」
「へっ?」
想定外の返しだったのか、弥生は呆けたような声を上げた。
面食らった風の顔付きをすぐに引き締め直して、彼女は言う。
「学力が足りないのなら補習を……生活態度に問題があれば、それを対話によって矯正していく……それで良いと思いますけど」
もっともな意見だが、この学園において、それがすんなりと通るとは思えなかった。樫田は不安げに貝塚と弥生を交互に見やった。
貝塚は依然として微笑を浮かべたままだ。
ゆっくりと教室を見渡した後、彼女が言う。
「そう。それじゃあ、菅野さんが実際にやってみる? 貴女の考えるやり方で、彼をまともに出来るのか……ふふ、楽しみね」
その言葉を受けて弥生は、ようやく樫田へと視線を向けた。
彼女の表情にはどこか後悔が滲んでいる様にも見えた。
樫田はどうして良いのか分からず、気まずい顔で黙るしかなかった。
「樫田君もそれで良いわね?」
嫌とは言えなかった。
落とし所としては妥当だ。これ以上抗うとなれば、発端である「再教育」自体へまで言及しなくてはならない。流石にそれをひっくり返すのは無理だと樫田も理解している。
それでも樫田は「分かった」とは答えられなかった。
弥生を巻き込むことに気後れしていた。
再び膠着状態に陥り掛けるが、弥生が先に提案を呑む旨を告げた。
こうなれば、樫田も頷かざるを得なかった。
思わぬ所からの助け舟によって、反乱は成功してしまったのだ。
*
細かな取り決めを成すには、朝のHRでは時間が足りなかった。
宙ぶらりんのままHRはお開きとなった。
貝塚が教室を出ていくと、同級生達は弥生にワッと群がった。
質問やら、同情やら、からかいやらが飛び交う。
好奇の視線を一身に浴びても、弥生は意見を曲げなかった。
――やるだけやってみる。それで駄目なら学園のやり方に戻せば良い。
臆せずそう言い切った彼女を、馬鹿にする者はいなかった。
積極的に樫田を躾けていた面々は、玩具を取り上げられた子供の様に口を尖らせていたが、気風は弥生に肯定する方へと向いていた。
*
放課後、貝塚は樫田、弥生の両者を指導室へと呼び付けていた。
始めに『再教育』の効果を計る基準が、女教師の口から告げられた。
「次の定期試験で高得点を取る……。それは良いとして、異性との交際って……何ですか……」
気まずそうに小さくなるばかりの樫田の横で、シャンと背を伸ばした弥生が不服を口にする。
貝塚は妖艶な眼差しを樫田に向けて、ゆっくりと言った。
「樫田君のおちんちんが小さくて先っぽまですっぽり皮被ってるの……菅野さんも知っているでしょう?」
「えっ……う、は、はい。それと何か関係が?」
女教師はにんまりと口を歪めた。
何も答えない彼女に対して、弥生が首を傾げた。
ふふ、と小さく笑い、貝塚は言う。
「樫田君。貴方の口から教えてあげて? どうして再教育の対象になったのか。まさかとは思うけど、忘れてないわよね?」
「は、はい……」
一時は反旗を翻した樫田だが、元より度胸のある方ではない。
貝塚の怒りを買うよりも、弥生の前で恥を掻く方がまだマシだった。
「あ、あの……その……学力とかだけじゃなくて、下の方が」
そう言った所で貝塚が口を挟んだ。下ではなく、はっきりと名称を口にするよう命じた。
樫田は羞恥で顔を上気させながら説明を再開する。
「お……おちんちんが小さいことも……再教育を受ける理由になっていて……」
弱々しく言葉を紡ぐ彼を、弥生は苛立ち混じりに見つめていた。
その視線に気付き、樫田は恥辱の念を強く感じた。
顔がますます火照る。その一方で、弥生の視線や、屈辱的な告白に倒錯的な興奮を覚えてしまう。
股間へ血流が集まり出したのを認めて、樫田は腰を引いた。
「そう言うことなのよ菅野さん。ただ、そうは言ってもペニスを大きくするのも限度があるでしょ? 大きさを基準にしちゃ可哀想だから、粗末な物をぶら下げていても、女の子と交際出来るだけのコミュニケーション能力があれば認めてあげようと思うの」
「はあ……まあ……、分かりました」
納得のいかない面もあるが、弥生は食い下がった。
貝塚とペニス論議をするつもりもなく、また、いざとなれば自分が形だけの交際相手になれば良いと踏んでのことだった。
それから、更に細かに取り決めを詰めていった。
一応、二人には反論する権利が与えられていたが、殆どは貝塚が口にしたままとなった。
先の様に樫田は木偶の坊でしかなく、弥生も淫語混じりに迫られると言い包められるばかりだった。
「それじゃあ、後は任せたわよ」
指導室を後にする二人に対して、貝塚は愉しげに言った。
彼らが去った後で、彼女は窓を開いて大きく深呼吸をした。
鼻の下を軽く擦って、忌まわしげに呟く。
「変わった趣味の子ね」
教室では人が多くて気付かなかったが、三人だけの密室でなら容易に嗅ぎ分けることが出来た。彼女の制服に付いている匂いは、ホワイトセージを焚いたものだ。
弥生が反抗に出たのも納得がいく。
「まあ良いわ。おかげで愉しくなりそうだもの……」
冷たくも妖艶な笑みを浮かべて、貝塚は独り呟くのだった。
「劣等生に、それ相応の措置を取って対処する。それがそんなにおかしい事かしら?」
貝塚の声色はどこまでも淡々としていた。
「いいえ。対処すること自体は何の問題も無いと思います。ただ、やり方がおかしいんじゃないですか?」
対する弥生の声は、ほんの僅かに震えていた。
義憤に駆られて立ち上がったとは言え、真正面から教師に歯向かっているのだ。
学園と言う小さな枠組みの中で、それがどれだけ勇気の要ることか。
弥生の言葉を受けて、貝塚はしばしの沈黙の後、口元を歪めた。
「……そこまで言うなら聞かせて貰えるかしら? 菅野さんが考える正しいやり方って一体どんなもの?」
「へっ?」
想定外の返しだったのか、弥生は呆けたような声を上げた。
面食らった風の顔付きをすぐに引き締め直して、彼女は言う。
「学力が足りないのなら補習を……生活態度に問題があれば、それを対話によって矯正していく……それで良いと思いますけど」
もっともな意見だが、この学園において、それがすんなりと通るとは思えなかった。樫田は不安げに貝塚と弥生を交互に見やった。
貝塚は依然として微笑を浮かべたままだ。
ゆっくりと教室を見渡した後、彼女が言う。
「そう。それじゃあ、菅野さんが実際にやってみる? 貴女の考えるやり方で、彼をまともに出来るのか……ふふ、楽しみね」
その言葉を受けて弥生は、ようやく樫田へと視線を向けた。
彼女の表情にはどこか後悔が滲んでいる様にも見えた。
樫田はどうして良いのか分からず、気まずい顔で黙るしかなかった。
「樫田君もそれで良いわね?」
嫌とは言えなかった。
落とし所としては妥当だ。これ以上抗うとなれば、発端である「再教育」自体へまで言及しなくてはならない。流石にそれをひっくり返すのは無理だと樫田も理解している。
それでも樫田は「分かった」とは答えられなかった。
弥生を巻き込むことに気後れしていた。
再び膠着状態に陥り掛けるが、弥生が先に提案を呑む旨を告げた。
こうなれば、樫田も頷かざるを得なかった。
思わぬ所からの助け舟によって、反乱は成功してしまったのだ。
*
細かな取り決めを成すには、朝のHRでは時間が足りなかった。
宙ぶらりんのままHRはお開きとなった。
貝塚が教室を出ていくと、同級生達は弥生にワッと群がった。
質問やら、同情やら、からかいやらが飛び交う。
好奇の視線を一身に浴びても、弥生は意見を曲げなかった。
――やるだけやってみる。それで駄目なら学園のやり方に戻せば良い。
臆せずそう言い切った彼女を、馬鹿にする者はいなかった。
積極的に樫田を躾けていた面々は、玩具を取り上げられた子供の様に口を尖らせていたが、気風は弥生に肯定する方へと向いていた。
*
放課後、貝塚は樫田、弥生の両者を指導室へと呼び付けていた。
始めに『再教育』の効果を計る基準が、女教師の口から告げられた。
「次の定期試験で高得点を取る……。それは良いとして、異性との交際って……何ですか……」
気まずそうに小さくなるばかりの樫田の横で、シャンと背を伸ばした弥生が不服を口にする。
貝塚は妖艶な眼差しを樫田に向けて、ゆっくりと言った。
「樫田君のおちんちんが小さくて先っぽまですっぽり皮被ってるの……菅野さんも知っているでしょう?」
「えっ……う、は、はい。それと何か関係が?」
女教師はにんまりと口を歪めた。
何も答えない彼女に対して、弥生が首を傾げた。
ふふ、と小さく笑い、貝塚は言う。
「樫田君。貴方の口から教えてあげて? どうして再教育の対象になったのか。まさかとは思うけど、忘れてないわよね?」
「は、はい……」
一時は反旗を翻した樫田だが、元より度胸のある方ではない。
貝塚の怒りを買うよりも、弥生の前で恥を掻く方がまだマシだった。
「あ、あの……その……学力とかだけじゃなくて、下の方が」
そう言った所で貝塚が口を挟んだ。下ではなく、はっきりと名称を口にするよう命じた。
樫田は羞恥で顔を上気させながら説明を再開する。
「お……おちんちんが小さいことも……再教育を受ける理由になっていて……」
弱々しく言葉を紡ぐ彼を、弥生は苛立ち混じりに見つめていた。
その視線に気付き、樫田は恥辱の念を強く感じた。
顔がますます火照る。その一方で、弥生の視線や、屈辱的な告白に倒錯的な興奮を覚えてしまう。
股間へ血流が集まり出したのを認めて、樫田は腰を引いた。
「そう言うことなのよ菅野さん。ただ、そうは言ってもペニスを大きくするのも限度があるでしょ? 大きさを基準にしちゃ可哀想だから、粗末な物をぶら下げていても、女の子と交際出来るだけのコミュニケーション能力があれば認めてあげようと思うの」
「はあ……まあ……、分かりました」
納得のいかない面もあるが、弥生は食い下がった。
貝塚とペニス論議をするつもりもなく、また、いざとなれば自分が形だけの交際相手になれば良いと踏んでのことだった。
それから、更に細かに取り決めを詰めていった。
一応、二人には反論する権利が与えられていたが、殆どは貝塚が口にしたままとなった。
先の様に樫田は木偶の坊でしかなく、弥生も淫語混じりに迫られると言い包められるばかりだった。
「それじゃあ、後は任せたわよ」
指導室を後にする二人に対して、貝塚は愉しげに言った。
彼らが去った後で、彼女は窓を開いて大きく深呼吸をした。
鼻の下を軽く擦って、忌まわしげに呟く。
「変わった趣味の子ね」
教室では人が多くて気付かなかったが、三人だけの密室でなら容易に嗅ぎ分けることが出来た。彼女の制服に付いている匂いは、ホワイトセージを焚いたものだ。
弥生が反抗に出たのも納得がいく。
「まあ良いわ。おかげで愉しくなりそうだもの……」
冷たくも妖艶な笑みを浮かべて、貝塚は独り呟くのだった。
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