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395.米原

>>394「手はぴったり横に着けて、気をつけの姿勢ね」

 ベッドの端に腰掛けている茜の前で、性器を丸出しにしたまま言われた通りの体勢を取る。
 情けないことに、たったそれだけのことで、俺は息が荒くなるような興奮を覚えていた。
 茜に命じられて、勃起した包茎を露出したまま直立不動する。
 そのことに倒錯的な悦びを見出してしまっていた。
 茜が俺の顔を上目遣いに見やってから、こう告げた。

「じゃあ……いくよ? 動いちゃ駄目だからね」
 
 彼女が手を振りかぶる。
 何をするつもりなのだろうか。
 不安と興奮にドキドキと胸を鳴らす俺の包茎に、平手打ちが放たれた。
 乾いた音が響き、俺はその衝撃に喘ぎを漏らした。
 大きく揺れた包茎に、痺れる様なビンタの余韻が走る。
 それは、痛み――とは言い切れなかった。
 萎えるどころかますます膨らみ、淫猥に脈打つ包茎を見つめて、茜が問う。

「痛かった?」

「い、いや……分からない……」

「分からない?」

「気持ち良い……のかも知れない」

「ボールが当たったりすると、凄く痛いって話、聞いた事があるけど」

「それは玉の方だよ」

 俺が言うと、茜は「こっち?」と首を傾げながら睾丸を握った。
 鈍い痛みが生じて、俺は妙な声を上げた。
 茜が睾丸を手の中で転がしつつ、言う。
 
「そっか。こっちが痛いんだ」

 茜の手には、それほど力が入っていなかった。
 そうは言っても、一切痛みが無い訳ではない。
 ほのかな気持ち良さもあるが、俺は顔を歪めていた。

「やめて欲しい?」

 そう訊ねながら、茜は上目遣いで俺の顔を見つめている。
 まるで俺を試しているかの様な雰囲気だ。搾り出すような声音で答える。
 
「い、いや……やめて欲しくない……」

「どうして? 痛いんだよね? それに、急に私が思いっきり握り潰すかもしれないよ」

「あ……茜……っ」

 ペニスがぴくり、と跳ねた。
 包皮の先端には、我慢汁の雫が玉状に滲んでいた。
 茜はそれが発情の証だ、と分かっているのだろう。
 散々俺の痴態を見てきたのだ。
 如何に生娘と言えど、学ばぬ訳がなかった。
 茜は俺を見つめる大きな瞳を細めて言う。

「どうしたの? ひょっとして、痛い事されて、潰すかもって脅されて、興奮したの?」

「あ……うっ……そう、かも……っ」

「変態だね、郡山くん」

 そう罵られた後に、俺は包茎に響く衝撃を認めた。
 再び平手打ちをされていた。
 茜の澄んだ声で言葉責めを食らい、俺は頭がクラクラするような興奮を覚えていた。
 被虐の熱に浮かされるまま、震える声で乞う。

「も、もっと、頼む……」

 茜がくすっ、と笑みを零した。
 俺が興奮に背筋を震わせている中、右から、左から、次々とビンタが飛んでくる。
 ぱちん、ぺちん、と音が響く。
 それに合わせてペニスが左右に揺さぶられる。
 俺の包茎は、茜を前にする馬鹿になってしまうようだ。
 痛みを感じこそすれど、快感を覚えるはずもない様な行為を受けている。それにも関わらず、気持ち良くなってしまう。
 はち切れそうな包茎からは、我慢汁が飛び散り、俺のズボンや茜の手を汚していった。
 込み上げるジンジンとした激しい疼きは、俺に絶頂の予感を与えた。

「あっ、茜っ、こ、これ以上は……!」

「出ちゃうの?」

 俺は黙って頷いた。
 散々変態的な行為を繰り返して来た癖に、急にビンタで射精させられるのが恥ずかしくなったのだ。
 茜は手を止めると、薄っすらと赤みを帯びた顔を上げて、こう言った。

「お仕置きに耐えた郡山くんには、ご褒美をあげる」

 彼女はそう告げるなり、俺の睾丸を握った。
 最初よりもずっと柔らかに、茜はそれを両手で包み込んだ。
 急にそこへの刺激を受けた事で、俺は妙に甲高い声を出してしまう。
 茜に少し笑われてしまった。
 
「ふふ。……これなら、どんな声が出ちゃう?」

 俺は首を傾げた。
 これならとは、一体何を指してのことか。
 答えは、とてつもなく衝撃的なものだった。
 屈んだ茜が俺の股間に顔を寄せる。
 肉棒に手を添えて、包皮にそっと唇を押し当てた。
 その柔らかな感触に、俺は声も出せずに呆然とした。

 ぱくり、と茜が包皮を口に含んだ。
 温かく柔らかな感触が包皮の先端を包み込んだ。
 込み上げる快感に俺は身震いしながら思う。
 これがフェラチオか!
 茜は、出来るだけ包茎を根本まで咥えた方が良いと思っているのか、慎重にそれを深く飲み込んでいく。
 柔らかく湿った口腔に撫でられる包茎が、蕩けていく。
 再び睾丸を握り、優しく揉みながら、茜は肉棒を限界まで頬張った。
 流石に根元まで全て、とはいかなかったらしい。
 その少し手前の辺りに、彼女の唇がある。
 茜は俺に上目遣いの視線を向けて、くぐもった声を上げる。
 何かを問うような調子だった。
 確かなところは分からないが、俺は答えた。

「あか、ね、の口……うっ……きっ、気持ち良い……!」

 それに満足したのか、茜は目を細めた。
 ゆっくりと包皮を口腔で扱き始める。

「くっ! う! くうう……ああっ……」

 最初に命じられた気をつけの姿勢をとったままで、口淫を受ける。
 それは奉仕されている、と言うよりも、圧倒的下の立場から、恭しく褒美を授かっているような心地だった。
 視線を下腹部へ向ける。
 茜が黒く艶やかな、さらさらとした髪を揺らして包茎をしゃぶっている。
 肉体的快感に加えて、茜が包茎を口にしている姿に、精神的な悦びが込み上げてくる。
 せっかくのフェラチオをもっと味わわなければ損だ。
 そう思うものの、抗おうとする程に興奮と快感は膨れ上がっていった。
 程なくして、俺は睾丸がせり上がるのを認めた。
 熱いものが今か今かと解放の時を待っている。
 俺は射精がすぐそこまで迫っていることに対して、切羽詰った声音を上げる。
 
「くっ、くぅぅ……茜……っ! で、出る……!」

 慌ててペニスを引き抜こうとするものの、茜は射精をどう受け止めたら良いのか分からなかったようで、口を離そうとしない。
 包茎が一つ大きく脈を打つ。精液が包皮から噴き出していた。
 その感触に対して、茜は咄嗟に零してはいけないと思ったのか、より深くペニスを咥え込んだ。
 柔らかな口腔に包まれた俺の肉棒は、脈打ちながら、ニ、三度に分けて全ての精液を吐き出した。
 天にも昇るような心地に、俺は蕩けた顔をしていたが、茜の苦しげな呻き声に慌ててペニスを引き抜いた。
 
「す、すまない――んむぐっ!?」

 茜が俺の両頬に手を添え、強引に口付けをしていた。
 あまりに唐突なそれを、俺は回避することが出来なかった。
 キスとは言え、そこにはたっぷりと精液を含まれているのだ。
 舌先が強引に唇を押し広げ、精液が流し込まれる。
 しょっぱい上に粘り気のある感触は、最低だった。

「んっ、んんん!?」
 
 逃げ出したいような思いに駆られるも、茜との口付け自体は至極の気持ち良さで、結局全てを口移しされてしまった。
 茜が顔を離した瞬間、俺はベッド脇に置かれたティッシュ箱から一枚引き抜き、そこへ口の中身を吐き出した。
 味も残り香も酷い。
 顔をしかめている俺に、茜はどこか恐々と問い掛ける。
 
「……怒った?」

「いや……」
 
 そもそも、自分で出したものだ。
 この不味さを茜に味わわせたのだから、怒って良いのは彼女だ。

「俺の方こそ、ごめん……」

投稿日時:2019/03/07 20:36

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