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439.米原

>>438「えーとな、今サソリ外に出てったぞ」
「本当?」
「あ、ああ、多分……」
「多分!?」
「え? いや、ああ出てった、確かに出てった」
「ふぅ、あー良かった」

 こんな狭いテントの中にサソリが居たら大変だもん、これで安心して寝られる。

「なあユーノ」
「うん?」
「お前さぁ、結構な包茎だよな」

 トーマスはボクのおちんちんに文句があるようだ。

「そうだよ、それが何? 気にしているんだから言わないでよ」
「お、おう、わりぃな、子供じゃそんなもんだよな」

 大人になっても“そんなもん”ですが何か?

「ただな、昼間とか気温高いし蒸れるだろ? ちゃんと綺麗にしてるのか?」

 まあ、砂漠は湿度が低くてカラッとしてるけど、ズボンの中は蒸れてるね。

「どうやって綺麗にしているんだ? やってみろ」

 そう言って、濡れたタオルを投げてよこした。

「やだよ、なんで今やらなきゃいけないんだよ」
「ば、ばか、ちゃんとしたほーほーでだな、キレイにしねーとだな、びょーきになるんだよ、びょーきに」
「え、病気はやだな」

 ひょっとして異世界特有の病気とかあるのか? ここはちゃんとアドバイスを聞いておいたほうが良さそう。

「こうやってね、上から下へ拭くんだよ」
「あー、ダメだダメだ、包茎なんだから、ちゃんと皮を剥きなさい」
「えー、いちいち皮をむいてキレイにするの? 面倒くさいなー」

 おちんちんとか、あんまり興味ないし。

「は? お前、それはやべーぞマジで、マジでキレイにしろ、マジで」
「んもー、はい剥きました、はい、さっさっさっ、おしまい」

 お掃除かんりょー。

「はあ? ばかばか、そんなんで良いわけねーだろ、こりゃマジで教育しねーとダメなやつだ」 

 なんか本格的にボクはダメらしい。

「かなり皮が余ってんだから、根本までちゃんと剥く、こうやって」

 トーマスがボクのおちんちんを手に取って、レクチャーしてくれる。 

「おう、ちゃんと亀頭がズルんと出てくるじゃねーか。それにしてもほれ、結構恥垢が溜まってるぞ、な?」
「うん」

 おちんちんなんて、ボクにとってはイジメられる道具だった、だから極力気にしない方向で過ごしてきた。

 それにウチは女系家族でボク以外は全員女だ、おちんちんの洗い方とか教えてもらったことはない。ボクにもお父さんが居れば相談も出来たんだろうけど。

「こうやって、カリの溝もしっかりと」
「痛っ、いたい」
「ああ? こんなんで痛がるなよ、毎日洗ってないから粘膜が薄いんだよ、もっとこう、ごしごしするくらいで丁度いいんだよ、鍛えろ」
「いっ、痛い、痛いって」

 トーマスは遠慮なくボクのおちんちんの頭をこする、すごく痛い。

「やだっ、もうやめて!」
「はあ? 人がせっかく説明してやってるってのに」
「ボクので説明する必要ないでしょ? トーマスので説明してよ」
「なにをっ、……お、おう、オレのか、アリだな」

 ふぅ、まったく、最初からそうすればいいのに。




「トーマスのおちんちんって、やっぱり大きいね、ムケてるし」

 ズボンを脱いだトーマスは、ボクに説明しやすいように、おちんちんを目の前まで持ってきてくれた。

「まぁな、平常時で十五センチ、勃起時で二十センチってとこだ」
「ふーん」

 膨張率はそうでもないんだ? でも大きいよ。

「ユーノのチンコは勃起するとどこまでになるんだ?」
「うーん、このくらい? 十センチくらいかなぁ」

 ボクは親指と人差し指で長さを表し、自分のおちんちんに重ねて見せた。

「はは、まぁそんなもんだろ、子供じゃまあまあな方じゃねーのか?」
「ふーん、わかんない」

 元世界でボクは、大勢の女の子にイジメられていた。そのため、おまんこは嫌というほど見てきたが、おちんちんは見たことがない。

「ん? どうした?」
「いや、重さはどうかなって」

 ボクはトーマスのおちんちんを手に取ってみた、せっかくだから、この機会に調査しておくと良いだろう 異世界人のおちんちんのことを。

「はー、オマタに付いてるの考えると、けっこう重いね」

 トーマスのおちんちん重い、大きいのも考えものだな。

「ほら、長さなんてボクの何倍? すごく違う、ボクのおっきしてもこんなに長くないもん」

 トーマスと向かい合って、おちんちんを並べて比べてみた。ボクのおちんちんが勃起したとしても、トーマスの通常時にも満たない。

「カリっていうのもぜんぜん違うね」
「ふーっ、ふーっ」

 ボクは自分の包茎おちんちんの皮を剥いて、カリ高さっていうのを比べてみた。

「あーでも、太さだったら結構がんばれるかも」
「ふーっ……、おちつけーオレ、ふーっ……」

 トーマスのおちんちんの太さは長さに対して細いと思う、ボクのおちんちんがおっきしたら、まあまあ迫れるんじゃないかな。

「重ねてみよ」

 そう思って、ボクは皮を剥いた自分のおちんちんを、トーマスのおちんちんにくっつけて比べてみた。

 ――ぴと。

「ふぬお!?」

 突然トーマスは奇妙な声を発し、股間を抑えてテントの隅へ飛び退いた。

「なんだよトーマス、びっくりしたなあ」
「びび、びっくりしたのはこっちだ!」
「どうしたの?」
「どどど、どうしただと? ど、どうもしないですヨぉ?」
「ふーん」

 ヘンなトーマス。

「そ、そんなことよりユーノ、お前いつまでフリチンでうろついてるつもりだ、早くズボン穿いて寝ちまえ!」
「あ、そうだね」

 今夜は女の子が居ないとはいえ、ちょっとだらしなかったな。

「兜合わせとは恐ろしいやつだ、オレはノーマル、オレはノーマル……」
「なにゴニョゴニョ言ってるの? トーマスは寝ないの?」
「ね、寝るぜ? もう少し落ち着かせたらな」
「え? うん。じゃあおやすみなさーい」

 他人のおちんちんなんて中々貴重なデータだ。そうだ、それに明日からは、ちゃんと隅々までおちんちん洗わなくちゃね。




「うう……ん」

 もう朝か、よく寝た。

 なんか変な夢を見た、大きな水筒を両手で持って、一生懸命、中の物を飲もうと吸いついている夢だった、気がする。

 って、あれ? なんだか口の中が。

「おう、起きたかユーノ」
「う、うん」
「どうした?」
「ううん、なんかね、口の中がイガイガしてるの」

 なんだろう、微かにお魚のニオイもするし。

「ま、まあ朝だからな、たっ、たまにはそんな時もあるぜ、ほれ水でも飲め」

 そんなものかな? そう思って、トーマスから受け取ったコップに口をつける。

 ――ゴクッ、ゴクッ、ゴクッ。

「ぷはーっ」

 ボクは口の中にあった違和感を、水と共にすべて飲み干した。

「ど、どうだ? うまいか?」
「うん! 美味しい、ありがとうトーマス」
「お、おう……」




 砂漠を猛進する中、前方に街の影が見えてきた。

「これはまた、でっかい壁だねー」
「そうでしょう、私の力、思い知ったかしら?」

 別にニーナの力ではないが。

 まだ遠くに霞んで見える城塞都市、グジク・グレートウォールは、ここからでも分かるほど高い城壁で囲まれていた。

 グジクに到着し高壁を見上げる。夕日を反射してオレンジ色に輝いている壁は、四角く切り出した石を積み上げて作ってあるようだ。

 門には甲冑を着込んだ兵士も常駐していて物々しい雰囲気だ、しかし門を通過する人々は他の街と同様、ある程度自由に行き来している。

 犯罪者ヅラのトーマス、もしくは子共のボクやレティシア、どちらが馬車の御者台に乗っていても不審に映ると思うが、問題なく門を通ることが出来た。

 この街の領主の娘であるニーナが荷台に乗っているので、バレたら騒ぎになるのではないかと内心ちょっとドキドキした。

 門をくぐった先に現れた街は、やはり砂漠の街らしく今までと変わりない建物が並んでいたが、高い壁に囲まれているせいかやや陰気な空気が漂う。

 街ゆく人々の中には冒険者や傭兵などの戦士が目立ち、揃いのプレートメイルを着込んだ騎士も見かけた。軍事色の強い街だ。

 そんな町並みを横目に、ボク達はさっそく冒険者ギルドへ向かった。

「ユーノ、オレは馬車を預けてくるからよ、ここ任せて良いか?」
「うん、いいよ」

 ここの冒険者ギルドにニーナを連れて入れば依頼は完了だ。ボクが完了の手続きをしている間に、トーマスは厩舎へ馬車を預けに行くことになった。

「わたしもトーマスさんと一緒に行く、一番良い宿屋を探すの」

 珍しい、レティシアもトーマスと一緒に行くという。ちなみに一番良い宿といっても高級という意味ではなく、コスパに優れた宿を探すんだ。

 さて、さっさとニーナの依頼を済ませてしまおう。小豆色のローブを纏ったニーナと共に、ギルド窓口へ進む。

 窓口のおじさんは、偽名で発行された依頼書とフードをかぶったニーナを怪しんでいたが、気を利かせてくれたのか滞りなく精算は済んだ。

 それにしても、今回は片道の依頼だけど、通信手段も無いのにどうやって事務処理しているのだろうか? 同じ冒険者ギルド同士だから問題ないのだろうか。

「何してるの、行くわよ」

 そんな事をボケっと考えていたらニーナに手を引かれた、そして、トーマス達が戻るまでギルド食堂でお茶を飲んで待つ。

「遅いわね、何をしているのかしら」

 確かに遅い、ただ馬を預けに行くだけなのにもう一時間は経つ。大抵は冒険者ギルドの近くに厩舎があるはずだけど、この街では違うのだろうか?

「いい宿を探すって言ってたから、時間かかっているのかな」
「もう一人で帰ろうかしら、依頼も済んだことだし」
「こんな夜に一人じゃ危ないよ、もう少し待とう?」

 ギルドの外はもう暗い、領主の娘であるニーナはこの街では無敵かもしれないが、それでも夜道を女の子一人で帰すわけにはいかない。

「あーもう限界、この私を待たせるなんて!」

 テーブルにバンと勢い良く手をついて、ニーナは立ち上がる。もう、ちっとも堪え性が無い、困ったお嬢様だ。

「待って、どこに行くの? まさか帰るの?」
「違うわ、あの二人をこっちから迎えに行くのよ」

 行動力が有るのは結構だけど、今はそれが非常に面倒だ、頼むから大人しくしていて欲しい。

「無闇に出ていっても仕方ないよ、もう戻ってくるかもしれないし」
「ここは私の街よ、どこに何が在るかくらい分かるわ、安くて良い宿なんでしょ? ここから近くて下々に人気のある宿といえば、あそこしかないわ」
「ちょと、ニーナ」

 ニーナはさっさと暗い夜道へ向かってゆく、ボクは慌ててお会計を済ませニーナの後を追った。まったく、教育係というジェームスの苦労も察するよ。

「待ってよ」
「遅いわよ、早く来なさい」

 ギルドへ到着した時点でボクの役目は終わっているんだ、別に放っておいても良いんだぞ? などとも言えず、トコトコとついて行く。

「その宿屋は何処にあるの? まだ? 結構歩いたけど」
「おかしいわね、確かこの辺に」

 全然ダメじゃないか、昼と夜では勝手が違う、こんなに暗くては大人だって迷うこともある、箱入り娘のニーナはそこらへんの詰めが甘いんだよ。

「ねえ、ギルドに帰ろう? 一度戻ったほうが良いよ」

 そう振り返ると、そこにニーナの姿は無かった、今肩を並べて歩いていた筈なのに音もなく消えてしまった。

「あれ? ニーナどこ?」

 別の道へ入ったのか? すぐに脇道を確認しながら来た道を引き返す。

「ニーナ!」

 ニーナは居た、しかし、彼女は何者かに路地裏の向こうへ連れ去られているところだった。ニーナは気を失っているみたいだ、グッタリしている。

 全身黒づくめの人影に両脇を抱えられ、投げ出された足が地面を引きずるようにして、路地裏の奥へと運ばれてゆく。

 言わんこっちゃない、すぐにナイフを抜き後を追う。

 あの黒装束、ニーナをさらった手際は見事だが、ボクから逃げられると思うなよ? すぐさまギラナ直伝の縮地技、なめり走りで距離を詰める。

 しかしその時、急に手首を掴まれガクリとボクの体は停止した。驚いて後ろを振り返る、そこには同じく黒装束の人影が数人居た。

 まさか、このスピードのボクの手を掴むなんて。

「だ、だれか……」

 大声で助けを呼ぼうとしたが手で口を塞がれ声が出ない、その手には見覚えのある物が握られていた、ピンポン玉くらいの丸い植物の蕾。マズい、この花は。

 そう思った時には遅かった、花から吹き出た煙が顔の前に広がる、息を荒げていたボクはモロにそれを吸い込んでしまった、すうっと視界が遠のいてゆく。

「くっ、ニーナ……」

投稿日時:2019/04/18 19:02

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