分からぬは夏の日和と人心
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2013/12/19 15:32
 が、こう周囲の者から妨げられると、実之助の敵に対する怒りはいつの間にか蘇っていた。彼は武士の意地として、手をこまねいて立ち去るべきではなかった。
「たとい沙門の身なりとも、主殺しの大罪は免れぬぞ。親の敵を討つ者を妨げいたす者は、一人も容赦はない」と、実之助は一刀の鞘を払った。実之助を囲う群衆も、皆ことごとく身構えた。すると、その時、市九郎はしわがれた声を張り上げた。
「皆の衆、お控えなされい。了海、討たるべき覚え十分ござる。この洞門を穿つことも、ただその罪滅ぼしのためじゃ。今かかる孝子のお手にかかり、半死の身を終ること、了海が一期の願いじゃ。皆の衆妨げ無用じゃ」

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2013/12/19 15:32
 その時であった。洞窟の中から走り出て来た五、六人の石工は、市九郎の危急を見ると、挺身して彼を庇いながら「了海様をなんとするのじゃ」と、実之助を咎めた。彼らの面には、仕儀によっては許すまじき色がありありと見えた。
「子細あって、その老僧を敵と狙い、端なくも今日めぐりおうて、本懐を達するものじゃ。妨げいたすと、余人なりとも容赦はいたさぬぞ」と、実之助は凜然といった。
 が、そのうちに、石工の数は増え、行路の人々が幾人となく立ち止って、彼らは実之助を取り巻きながら、市九郎の身体に指の一本も触れさせまいと、銘々にいきまき始めた。
「敵を討つ討たぬなどは、それはまだ世にあるうちのことじゃ。見らるる通り、了海どのは、染衣薙髪の身である上に、この山国谷七郷の者にとっては、持地菩薩の再来とも仰がれる方じゃ」と、そのうちのある者は、実之助の敵討ちを、叶わぬ非望であるかのようにいい張った。

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2013/12/19 15:31
缶バッジを集める
様々なデザインなどがある缶バッジなのですが、
結構缶バッジをコレクションしている人が多くいます。
缶バッジはデザイン性が高いものも多く、
また特定のイベントでしか配られないとかいう
希少性をもったものも多くありますので、
缶バッジはコレクション性が高いアイテムの1つだと言えるでしょう。
缶バッジをコレクションする際のポイントというのは、
1つはデザイン面からの面白さがあるのですが、
それと合わせて重要視されるのが希少性です。
特に正規品であるのかどうかと言うのがポイントで、
音楽ライブなどで販売された正規品を
ファンが勝手にコピーしたようなものは、
やはりあまり評価されることはありません。
もし正規品を作るのであれば、
裏面に正規品を示すシールなどを貼っておくと、
ファンにも価値がわかりやすくなると思います。
缶バッチ マグネット

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2013/12/18 14:31
「しかし僧院の中は円柱が五六本あるばかりで……」
 判事は不思議がった。
「そこに潜り込んでいるのです。」とボートルレは力を込めて叫んだ。「判事さん、そこを探さなければ、アルセーヌ・ルパンを見つけ出すことは出来ません。」
「アルセーヌ・ルパン!」判事は飛び上って叫んだ。
 有名なその一言に一座はしばらくしんとしてしまった。アルセーヌ・ルパン!大冒険家大盗賊王、眼に見えぬ彼ルパンは空しい大捜索の幾日間を、どこかの隅で傷に苦しんでいる。不敵の敵は本当にルパンであろうか?判事とガニマール探偵とはしばらくじっと動かなかった。
「ごらんなさい。」とボートルレはいった。「彼らが手紙をやった宛名の略字に何とありますか、A・L・Nすなわちアルセーヌの一番初めの文字と、ルパンの名の初めと終りの文字をとったのです。」
「ああ、君は実に偉い天才です。この老ガニマールも負けました。」とガニマールはいった。ボートルレは喜びに顔を赤くして老探偵の差し出した手を握った。三人は露台に出た。そしてルパンが隠れているという僧院を見下した。判事は呟くように、
「してみるとあいつはあそこにいますね。」
「あそこにいます。」とボートルレは重々しげにいった。「銃で撃たれた時からルパンはあそこにいるのです。いかにルパンでもあの時逃げ出すことは出来ないことだったのです。」
「そうするとどうして生きているのだろう。食物や飲物も入るだろうに。」
「それは僕にはいえません。しかし彼があそこにいることは決して間違いありません。僕はそれを断言します。」
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2013/12/18 14:30
ルパン?生?死?

 判事とガニマールはまた顔を見合せた。
「伯爵、この話は真実でございましょうか?……」
 判事は尋ねた。伯爵は答えなかった。
「黙っていらしってはかえっていけません。どうぞお話し下さい。」
「今のお話しはみんな本当です。」伯爵ははっきりといった。判事は飛び上って驚いた。
 伯爵は、二十年も自分の家に働いたドバルを賊の仲間だと知らせたくなかった。それにもうドバルは殺されているのでそれで十分だと思った。ドバルは二年前からある婦人と知り合いになり、その人にお金を送るために盗賊をするようになったということなどを伯爵は語った。
 伯爵が室を出ていったあとで判事は今度は犯人の隠れている宿屋のことのついて尋ねた。ボートルレの答えはまた違っていた。ボートルレの答えによると、犯人は宿屋などにはいないというのである。宿屋へ運んだように見せかけたのは警察を誑す陥穽であった。犯人はたしかにまだあの僧院の中に隠れている。死にそうになっている病人をそんなに運び出せるものではない。あの火事騒ぎをやっている間に医学博士を僧院の中へ案内した。医学博士が宿屋だといったのは、犯人たちが博士を脅して、あのようにいわせたのだとボートルレは語った。

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2013/12/18 14:30
「判事さん思い出して下さい。気を失っていた伯爵が一番初めに叫んだ言葉は『ドバルは生きているか?』ということでした。その後伯爵は『眉間を曲者に殴られて気を失ってしまった。』といわれました。どうして気を失った伯爵が、正気づくと同時にドバルが短剣で刺されたことを知っていたのでしょう。」
 そしてすぐまたボートルレはつづけた。
「強盗たちを客間へ引き入れたのはドバルです。そして伯爵が目を覚ましたので、ドバルは短剣を持って伯爵に飛びつきました。伯爵はついにその短剣を奪いとってドバルを刺したのです。それと同時に、も一人の曲者に眉間を殴られて気を失ったのです。」

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2013/12/18 14:30
「では別にまだ逃げた犯人がいるのですね。」
「いいえ。」
「ではどうもよく分らないですな。誰がドバルを殺したのです。」
「それを申し上げる前に、少しくわしくお話をしないと、私が余り変なことをいうようにお思いになるでしょう。まずドバルが殺されたのは夜中の四時であるのに、ドバルは昼間と同じような着物を着ていました。伯爵はドバルは夜更しをする癖があるといわれましたが、みんなのいうのを聞きますと、それとは反対に、ドバルはたいへん早く寝るそうです。そうしますと話が合わないで少しおかしくなります。それに僕の調べたところによると、あの名画を写させてくれといった画家は、ドバルの知り人だったということです。それでいよいよ僕はドバルが怪しいと思いました。」
「するとどういうことになりますか?」
「つまり画家とドバルとは仲間でした。それにはたしかな証拠があります。ドバルが手紙を書いた吸取紙の端に『A・L・N』という字があったのを見つけました。電報の名前と同じです。ドバルは名画を盗みとった強盗犯人と手紙のやり取りをしていたのです。」
「なるほど、そして……」判事はもう反対しなかった。
「ですから、逃げた犯人が、仲間であるドバルを殺すはずはありません。」
「そうかしら?」
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2013/12/18 14:29
怪少年の明察

 判事とガニマールとは驚いて眼を見合わせた。
「とにかく伯爵に聞いてみよう。」と判事はいった。伯爵は呼ばれた。そしてついにボートルレは勝った。伯爵はしばらく困ったような顔をしていたが、やがて口を開いた。
「実は判事さん、この名画は四枚とも偽物です。」
「では、なぜさようおっしゃらなかったのです。」
「私は穏な方法でその絵をとり戻そうと思ったからです。」
「それはどんな方法ですか?」
 伯爵は答えなかった。ボートルレは代って答えた。
「この頃、大きい新聞に『名画買い戻す』という広告が出ています。あれがそうです。」
 伯爵は首肯いた。またしても少年は勝った。判事はますます感心してしまった。
「君は実に偉いですね。どうぞ先を話して下さい。君は犯人の名前も知っているといわれたはずですね。」
「そうです。」
「誰があのドバルを殺したのでしょう。その男はどこに隠れているのでしょう。」
「実はそのことについては、一つの間違いがあります。ドバルを殺した男と、逃げた男とは別の人間です。」
「何ですって?」判事が叫んだ。「伯爵や二人の令嬢が客間で見た男、そしてレイモンド嬢が銃で撃って、邸園の中で倒れ、我々が今探している男、それと、ドバルを殺した男とは別の人間だというのですか。」
「そうです。」
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2013/12/18 14:29
「易しいというのは?」
「順々に考えてみさえすればいいからです。それはこうです。二人の令嬢の言葉によれば、二人の男が何か持って逃げたということです。そうすると何か盗まれたに違いないのです。」
「なるほど、何か盗まれたのですね。」
「ところが伯爵は何も盗まれてはいないといっています。」
「なるほど。」
「この二つのことから考えてみると、何か盗まれたのに、何も失くなっていないということは、何か盗んだ品物と少しも変らぬ物が本当の物とおき変えられてあるに違いありません。」
「なるほど、なるほど。」と判事は一生懸命になって聞き出した。
「この部屋で強盗の眼につくものは何でしょうか?二つの物があります。第一にあの立派な絨氈です。しかしこんな古い掛物はとてもこれと同じようなものは出来ません。すぐに偽物ということが分ります。次にあるのは四枚のこの名画です。あの壁に掛けてある有名な絵は偽物です。」
「何ですって!そんなはずはない。」
「いや、たしかにそうです。」
「いや、それは間違いだ。」
「まあ、判事さんお聞きなさい。ちょうど一年前ある一人の男が、伯爵のところへ尋ねてきて、あの名画を写させて下さいと申し込みました。伯爵が許されたので、その男は早速それから五ヶ月も毎日この客間に来て写していったのです。ここに掛っているのは、その時写した方の偽物です。」

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2013/12/18 14:29
「判事さん、じゃもうすっかり分りましたね。」
「十分分りました。第一レイモンド嬢が塀の外の小路で君を見たという時間に、君はたしかにブールレローズにおられた。君は間違いなくジャンソン中学の学生で、しかも優等生であることが分りました。」
「では放免して下さいますか。」
「もちろんします。しかし先日話し掛けて止めてしまった話のつづきをぜひしていただきたい。二日間も飛び廻ったことだから、だいぶ調べは進んだでしょう。」
 これを聞いたガニマールはいかにも馬鹿々々しいというような顔をして、部屋を出ようとした。判事は手を挙げてそれを呼びとめた。
「ガニマールさん、いけないいけないここにいらっしゃい。ボートルレ君の話は十分聞くだけの値があります。ボートルレ君の鋭い頭を持っていることはなかなかの評判で、英国の名探偵エルロック・ショルムス氏の好い対手とさえいわれているのですよ。」
 ガニマールは苦笑いをしながらとどまった。ボートルレは話し出した。
「僕は調べたことをお話して、知ったか振りをしようとは思いませんが、まず盗まれたもののことからお話しましょう。僕にはこれは一番易しい問題でしたから。」

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