分からぬは夏の日和と人心
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2013/12/18 14:29
偽物は偽物です
その夜ガニマール探偵は小門の外を警戒していた。
十二時すぎになって果して怪しい一人の男が森から現われて、ガニマールの前を通り、小門から庭へ忍び込んだ。三時間ばかりの間、その男は僧院の近所をあちこちと歩き廻り、あるいは地上に屈んでみたり、あるいは円柱にのぼってみたり、あるいは一つ所に立ち止まって長いこと考えていたりしたが、やがてまた元のようにガニマール探偵の前を通っていこうとした。待ち構えていた探偵たちは突如組みついて捕まえた。曲者は少しも手向いをしなかった。しかしいざ調べる時になると、何を聞かれても答えなかった。判事が来れば分ることだというだけであった。月曜日の朝判事は着いた。ガニマールは曲者を判事の前に引き立てた。曲者はボートルレであった。
判事はボートルレを見て、非常に喜ばしげに両手を差し出して叫んだ。
「やあ、ボートルレ君!君のことは十分分りました。君はもういないのかと思いましたよ。」
ガニマールは驚いてしまった。ボートルレは判事にいった。
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2013/12/18 14:29
医学博士の誘拐
調べた結果、その考は間違いのないことになった。馭者に化けて入り込み、皮帽子をとりかえて、自転車で逃げた犯人は、自転車をアルクの森の溝の中に捨てて、サン・ニコラ村へ行き、そこから左のような電報をパリへ打った形跡がある。
A・L・N・身体悪し、手術を要す、名医送れ。
これでいよいよはっきりと分った。この電報を受けとった悪漢の仲間は、博士を早速送ったのだ。こちらでは火事騒ぎを起させ、その間に傷ついた首領を救い出して、これを近所の宿屋へかつぎ込んで、手術を受けさせたに違いない。今はその宿屋をつきとめればいい。パリからは特別にガニマール探偵が入り込んできた。近所の宿屋という宿屋は一軒残らず家の中まで調べた。しかしどうしたのか、そんな怪我人を泊めた宿屋は一軒もなかった。
翌日曜の朝、一人の巡査が、その夜塀の前の往来で一人の怪しい人影を見たといった。仲間の者が様子を見に来たのであろうか?あるいはまた彼らの首領が僧院のどこかに隠れているのであろうか?
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2013/12/18 14:26
黄ばんでしまったTシャツの再利用法
お気に入りのTシャツが黄ばんでしまったり、変色してしまった場合、私は逆に違う色で染めてみるとか、ムラ染めならぬムラブリーチしたりしています。
染めたりブリーチしたりする時、まっ先に思い浮かぶことと言えば、「上手く綺麗に染まるかな?」と言うこと。
そこを逆手に取って、綺麗に染まらないようにムラ染めにすれば、簡単で失敗もありません。
私のやり方はまずTシャツを濡らして絞ります。
その絞ったままのTシャツを染料に浸けます。二色以上にしたければ広げてまた絞ってそのまま違う色の染料に浸します。
その後色止めをすればオッケー。
ブリートも同様、絞ったままでブリーチ液に浸し、広げてまた絞ってブリーチすればオッケー。輪ゴムで何箇所か縛ってブリーチしても可愛い模様が残ります。
オリジナルTシャツ
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2013/12/14 20:25
その内にまた一と月もたちました。
ポピイとピリイとは、時々、モーティのことを思い出しては、お互いに、そっと、ため息をついていました。
ところがある朝のことです。いつものように車庫の扉が外からギイッと開くと、二人は、びっくりして眼を見張りました。
そこには、モーティが、赤い塗りたてのサイドカアまでつけて、いせいよく立っているのです。
二人は、嬉しくって暫くは、ものも言えませんでした。するとモーティが、すっかり大人らしくなった太い声で言いました。
「しばらく。――お父ッつァん。おッ母さん。僕、妹をつれて来たからよろしく頼むよ。」
ポピイもピリイも、びっくりしてしまいました。何て、ぞんざいな口をきくのでしょう。あんなに心配をさせておきながら、まだお行儀も直らないのかしら、困ったものだと思いました。しかし、それよりも、第一に、長い間欲しがっていた女の子までも出来たのだから、ありがたいことだと思い直して、モーティには別に、こごとも言いませんでした。
しかしモーティも馬鹿ではありません。お父さまやお母さまが、何にもおこごともおっしゃらず、前の通りにやさしくして下さるのを見ると、自分の悪かったことが、しみじみと分って来ました。モーティは、今では、もとのように可愛いすなおないいモーティです。そして、四人で一つの車庫の中に、仲よく賑やかに暮しております。
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2013/12/14 20:24
ハンドルを、しっかりと握りながら、御主人は真青になって叫びました。交通巡査は、すぐに黄色いオートバイに飛び乗ってあとを追いかけました。
それでも、とうとうポピイは、人を轢かずに、ある貸車庫の前で止りました。赤いオートバイが、その中にはいったからです。
ポピイは、ぐったりすると一しょに、きまりが悪くって情なくってたまりませんでした。あんなにまでして追いかけたオートバイは、モーティではなかったのです。
御主人はポピイの心もちを御存じないものですから、ただ機械がくるったのだと思って、その場で、すぐにハンドルだのギーアだのをすっかり、新しいのに取りかえて下さいました。で、もう二度と、あんな危ないことは起る筈がないと固く信じていらっしゃいます。
全く、それから後は、ポピイは一度だって、勝手に走りまわったことはありませんでした。しかし、それは、ポピイが、もう、モーティを探すことをあきらめたからなのです。ピリイも、もうすっかりあきらめてしまいました。
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2013/12/14 20:24
ポピイは、つぎはぎだらけのタイヤが、ペシャンコになったのもかまわず、びゅうびゅうと赤オートバイの後をつけました。今度は公園です。曲りくねっている道が、じれったくてたまらないので、ポピイはまん中の大きな池へザブンと飛びこみました。ポピイは、そのまま水の中をザブザブとまっすぐに駈けぬけて、電車通りへ飛び出しました。赤オートバイは、また、チラチラと、うしろを見せながら人ごみへ隠れてしまいました。ポピイは、もう夢中です。走って来る電車の前をすれすれに走りぬけたり、もう少しで満員の乗合自動車と衝突しそうになったり見ていてもハラハラするようです。歩いている人たちは、あわてて、道の両側にある店の日除けの下へ逃げこんで、びっくりしてあとを見送っていました。それよりも、おどろいたのは御主人です。
「助けて下さい。誰か、この自動車をとめて下さい。」
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2013/12/14 20:23
ポピイは、死にもの狂いになりました。角を曲ると、赤オートバイは、向うの坂の下に小さく豆粒のように見えます。ひどいデコボコの坂です。それでもかまわずポピイは全速力で走りました。年を取っているポピイの体は、石ころなどに乗り上げるたんび、ばらばらになるのではないかと思うほど、ひどく揺れました。でも、ポピイは、そんなことには構っていられません。しかし困ったのは御主人です。御主人の体はポンポンとゴムまりのように飛び上りました。その拍子に帽子がポンと飛びました。それでも、はッと思う間もなく、またヒョイと帽子が、もとの通り、御主人の頭にかぶさったのは仕合せでした。
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2013/12/14 20:23
その内に、ポピイは、いよいよ御主人のおともをして、下町へ出かけました。今日こそは、どうしてもモーティを見つけなければならないと思って、ポピイは一生けんめいです。オートバイらしいものがあるとポピイはランプの眼をくりくりさせて見すえました。すると、ふいに、一町ばかり先を赤いオートバイがちらッと通りました。あっと思う間に、そのオートバイは横丁へ曲ってしまいました。ポピイは気ちがいのようになって後を追いました。どうしてもモーティにちがいないと思ったからです。乗っていた御主人は、びっくりして、車を返そうとしましたが、てんでハンドルがききません。
ポピイは御主人の行く先などは、すっかり忘れてしまって、いきなり、その横丁へ飛びこみました。赤いオートバイは、もう、また向うの町角を曲るところです。ポピイは、このへんの道をよく知らないものですからよけいにあせりました。見失ったら、もうおしまいです。
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2013/12/14 20:23
それから、また幾日もたちました。でも、まだモーティは帰って来ません。ポピイとピリイとは、がっかりして、すっかり元気がなくなってしまいました。
「ひょっとしたら、モーティは盗まれて、古自動車屋へでも売られたんではないでしょうか。」
「よし、その内、御主人のおともをして、下町の方へ出ることがあるだろうから、その時は、思い切ってガラクタ屋の店でも何でも探して見よう。……なに、きっと見つかるよ。」
ポピイは、つけ元気をして、こう言いました。
「しかし、あんな、やんちゃなモーティのことだ。ことによると、悪い仲間にさそわれて、警察にでもつかまってるんじゃアないかな。」
ポピイが言いますと、ピリイは、心の中では、そうかも知れないと思いながら、やっぱり打消さずにはいられませんでした。
「いいえ、やっぱり私は盗まれたんだと思いますわ。――ねえ、あなた、一つ新聞に広告をして見ようではありませんか。」
そこで、モーティを見つけて下すった方には、お礼をするという広告をいくつかの新聞に出しました。しかしちっとも、てがかりはありませんでした。返事は、ずいぶん来るには来たのですが、みんな見当ちがいのいい加減なものばかりでした。二人は、また、がっかりしてしまいました。
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2013/12/14 20:23
「いつも、おとなしい車なのに、今日は、どうしたんでしょう。ちょっとしたことにもすぐに、湯気をシュッシュッとふき出して、じきに放熱器の水が乾いてしまうんですよ。」
奥さんは、その晩、御飯を召し上りながら、御主人にお話になりました。
「いや、私のポピイも、今日は、よほどへんだったよ。」と御主人もおっしゃいました。「横丁さえ見れば曲りたがるんだ。ハンドルをいくら抑えてもきかないんだ。どうもへんだよ。」
それでも次の日、御主人は、またポピイに乗ってお出かけになりました。ポピイは、また、一生けんめい、モーティを探そうと、あっちの横丁、こっちの裏通りを覗き覗き歩きました。で、とうとう、うっかり、ガラスのかけらの上に乗り上げてタイヤをパンクしてしまいました。御主人こそいい災難です。――ポピイは、御主人と一しょに夜遅くなって、ようやくお屋敷へ帰りました。