分からぬは夏の日和と人心
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2013/10/11 15:04
ただ驚くべきことは、人びとが少なくとも橋亭では、尊敬すべきことというよりは滑稽であるようなことに関する場合であってさえ、ある種の尊敬をこめてシュワルツァーのことを話すという点であった。ギーザまでこの尊敬の余徳にあずかっていた。それにもかかわらず、助教員であるシュワルツァーがKよりも途方もなく優越した地位にいるのだと信じていることは、正しくなかった。そんな優越性などはないのだ。学校小使は教師たちにとって、ましてやシュワルツァーのたぐいの教師にとっては、なかなか重要な人物であり、それを軽蔑するようなことがあれば、その返報を受けないではすまない。そういう人物に対して軽蔑的な態度を取ることを身分の上からどうしても捨てかねるというのであれば、少なくともそれに対応するような返礼によってその人物にそんな軽蔑を耐えうるようにしてやらねばならぬのだ。Kはときどきそのことを考えようとした。それにまたシュワルツァーはあの最初の晩以来、こちらに対して借りがあるわけだ。
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2013/10/11 15:04
それでも彼にはほんとうは自由な時間がたっぷりあった。というのは、ギーザはふだん、ただ授業時間中と練習帳の点検のときにだけ、彼に姿を見せるのだ。これはむろん打算からやっていることではなく、彼女はのびのびした生活が好きで、それゆえひとりでいることが何よりも好きであり、おそらく家にいて完全な自由を味わいながら長椅子の上に身体をのばすことができるときがいちばん幸福なのだった。そんなとき、彼女のそばには猫がいるが、これがもうほとんど動けないので、別にじゃまにもならない。そこでシュワルツァーは一日の大部分を仕事もしないでぶらぶら過ごすのだが、これがまた彼には好ましいのだ。というのは、そういうときにはいつでも次のような機会があるわけで、彼はそんな機会を十分に利用もする。つまり、そんなときにはギーザが住む獅子街へ出かけていき、屋根裏の彼女の小さな部屋まで上がっていって、いつでも鍵がかかっているドアのところで聞き耳を立て、部屋のなかが例外なくなぜかわからぬほど完全に静まり返っているのをたしかめると、また急いでそこを立ち去っていく。ともかく、それでも彼においてもこうした暮しかたの結果がときどき現われた。――だが、けっしてギーザの面前ではそんなことはなかった――それが現われるのは、ほんのちょっとのあいだ目ざめる役所一流の尊大さを滑稽に爆発させるときだけである。その役所一流の尊大さというのは、むろん彼の現在の地位にはすこぶるぴったりしないものだ。とはいえ、そんなときにはたいていはあまりかんばしくない結果になるのだった。そのことはKも体験していた。
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2013/10/11 15:02
自然に被リンクを増やそう
被リンクを増やす上で、注意することはどのようなことでしょうか。目をつけられやすい行動をしていると、逆効果になってしまうことも考えられます。そこで、
被リンクをする上で重要な、自然に被リンクを増やす、ということについて知っておきましょう。
もし少しでも怪しい行動をしてしまえば、そこから一気にマイナス評価をもらうことになりかねません。例としては、被リンクの売買、短期間での不自然な日リンクの増加などが挙げられます。一度ペナルティをもらってしまうと、一気にランクが落ちてしまいかねないので、できるだけ自然に増やすようにしましょう。
もしも心当たりのある方は、早くに自然な方法に切り替えるようにしましょう。いつペナルティを受けることになるかわかりません。
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2013/10/03 19:24
手紙はどれももどってはこなかったが、返事もまた来なかった。ところが日曜日にひとつの徴候が見られ、そのはっきりし加減は十分なほどだった。その朝は早くから、鍵穴を通してKは、控えの間に特別な動きがあることを認めていたが、やがてそのわけがわかった。フランス語の女教師、彼女はドイツ人でモンタークといい、弱々しく、顔色の蒼い、少し跛の女で、これまで自分の部屋をとって住んでいたが、ビュルストナー嬢の部屋に引っ越したのだった。何時間も、彼女が控えの間を通って足を引きずるのが見られた。しょっちゅう、下着類とかカバーとか本とかを忘れて、そのために取りにゆき、新しい部屋に運ばねばならないのだった。
グルゥバッハ夫人がKに朝飯を持ってきたとき――Kをひどく怒らせて以来、夫人はどんな小さなことも女中にはまかせなかった――Kは、五日ぶりに初めて彼女に話しかけないでいられなくなった。
「いったい今日は、なぜ控えの間がこう騒がしいんですか?」と、コーヒーを注ぎながらKはたずねた。「やめさせるわけにはいきませんか? 日曜日にわざわざ片づけなけりゃあいけないんですか?」
Kはグルゥバッハ夫人のほうを見なかったが、彼女がほっとしたように息をつくのがわかった。Kのこのようなきびしい質問さえも、夫人は、許しあるいは許しの始まり、と考えたのだった。
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2013/10/03 19:24
最近Kは、ビュルストナー嬢とほんの少しでも話すことができなかった。きわめてさまざまなやりかたをしてみて、彼女に近づこうとしたが、彼女はいつでもそれを逃れることを心得ていた。事務室からすぐ家に帰り、明りもつけずに部屋にこもり、長椅子の上にすわって、控えの間をながめること以外に何もしなかった。たとえば女中が通り過ぎ、人のいないらしいその部屋の扉をしめてゆくと、彼はしばらくしてから立ち上がり、それをまたあけてみるのだった。朝はいつもより一時間ばかり早く起きたが、おそらくビュルストナー嬢が勤め先に出てゆくとき、彼女とだけ出会うためだった。ところがこんな試みがどれもうまくゆかなかった。そこで、彼女に勤め先にも部屋あてにも手紙を書き、その中でもう一度自分の態度を弁明しようとし、どんな償いにも応じる旨を申し出、彼女が置こうと思うどんな限界もけっして踏み越えないことを約束し、一度会う機会を与えてほしいということだけを懇願し、あなたと相談しないうちはグルゥバッハ夫人ともどうしようもないのだから、特にそうしてほしい、と言ってやり、最後には、次の日曜日には一日じゅう部屋にいて、自分の懇請を聞きとどけてくださることを約束するような、あるいは少なくとも、何であってもあなたのおっしゃることに応ずると約束しているのになぜ私の懇願をかなえていただけないのかを説明するような、なんらかの合図をお待ちしている、と言ってやった。
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2013/10/03 19:23
Kはしばらくじっと立ち止っていたが、懐中鏡で髪を直し、次の踊り場にころがっている帽子を拾い上げ、――案内係がきっとそれを投げ出したのだった――階段を降りていったが、気持があまりにさっぱりし、あまりに大股で歩けたので、この変りかたにほとんど不安を覚えたくらいだった。こんな驚きは、これまでのまったくしっかりした健康状態のときにもまだ感じたことはなかった。肉体が革命を起そうとし、彼がこれまで古い肉体の働きに耐えてきたので、新しい働きを用意しようとしているのだろうか? できるだけ早い機会に医者のところへ行こうという考えをしりぞけはしなかったが、いずれにせよ彼は、――そのことを彼は決心できたが――これからの日曜日の午前はいつでも今日よりはよく使おう、と思うのだった。
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2013/10/03 19:22
「もっと大きな声で」と彼は頭を垂れたままささやいてから、恥じた。自分には聞き取れないけれど十分大きな声で言われたのだ、ということを知っていたからである。そのときとうとう、眼の前の壁に穴があいたように、さわやかな風が吹きつけてきた。そしてそばで言う言葉を聞いた。
「初めは行きたがるが、ここが出口だ、と何回でも言ってやればいい。そうすれば動かなくなるよ」
Kは、娘があけた出口の扉の前に立っていることに気づいた。身体じゅうの力が一時に戻ってきたような気がし、自由の身の前味を味わうのだった。すぐに階段に一段足をかけ、そこから、自分のほうに身体をかがめている二人の道づれに別れを告げた。
「どうもありがとう」と、彼はまた言い、繰返し二人の手を握ったが、二人が事務局の空気に慣れていて、階段からやってくる比較的さわやかな空気にも耐えがたそうなのを見てとって、初めて立ち去った。二人はほとんど返事もせず、もしKがきわめて素早く扉をしめてやらなかったならば、娘はおそらく倒れたであろう。
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2013/10/03 19:22
「いや」と、Kは言った。「休みたくはありません」
できるだけきっぱりとそう言ったのだが、実際は、腰かけることが彼には気持よかったにちがいなかった。まるで船酔いのようだった。難航中の船に乗っているように思われた。水が板壁の上に落ちかかり、廊下の奥からはかぶさる水のような轟々という音が聞え、廊下は横ざまに振れ、両側に待っている訴訟当事者たちは下がったり、上がったりしているように思われるのだった。それだけに、自分を連れてゆく娘と男との落着きはらった様子がわからなかった。自分は彼らに引渡されたのであり、彼らが自分を手放すなら、木片のように倒れるにちがいなかった。二人の小さな眼からは、鋭い視線があちこちと走り、彼らの規則正しい足取りをKは感じるのだったが、ほとんど一歩一歩彼らに運ばれている有様なので、それに合わせることはできなかった。ふと、二人が自分に何か言っていることに気づいたが、何を言っているのかはわからず、ただ騒音だけが聞えてきた。その騒音はあたりにいっぱいで、それを貫いて海の魔女のような変化のない高い調子が響くのが聞えた。
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2013/10/03 19:22
「今日はまだ」と、彼は言った。「私の申請が片づきはしない、ということをよく存じています。けれど、ここで待たしていただけるだろう、今日は日曜日だし、時間があるし、ここでお邪魔にはならない、と思ってまいりました」
「そんなに言い訳をおっしゃらなくたってよろしいですよ」と、案内係は言った。「そんなに気をつかっていただくのはまったく恐縮です。あなたはここで余計な場所ふさぎをしておられるが、私の面倒にならないかぎりは、あなたの事件の進行を逐一たどられるのを妨げはしませんよ。自分の義務をおろそかにしている人たちばかり見ていると、あなたのような人たちのことは我慢するようになります。どうぞおかけください」
「訴訟当事者を相手にすることをなんて心得ていることでしょう」と、娘は言い、Kもうなずいたが、すぐ、案内人が彼にまたきいたので、とび上がった。
「ここで腰かけませんか?」
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2013/10/03 19:21
「私にはこう思われるんですけど」と、彼らが廊下に近づいたとき、娘は小声でKの耳にささやいた。「この案内係さんのことをよく思っていただくようにすることが、とりわけ、私の責任なんじゃないかしら。信じていただいて結構なんですけれど、私はほんとうのことを言おうと思います。あの人は冷たい人じゃないのよ。病気の訴訟当事者を連れ出すなんて、あの人の役目じゃありませんのに、ごらんのように、あの人はしますのよ。きっと私たちの誰もが冷たくなんかないし、きっとみなよろこんで人を助けたいんですわ。それでも裁判所の役人なものですから、私たちは冷たいし、誰も助けようなどとは思っていない、っていうように見えがちなんです。ほんとうにつらいわ」
「ここでちょっと休みませんか」と、案内係が言ったが、もう廊下に出て、Kがさっき話しかけた被告のちょうど前に来た。Kは、ほとんど自分を恥じていた。さっきはこの男の前にちゃんと立っていたのだが、今は二人がささえねばならず、帽子は案内係がひろげた指の上にのせており、髪形は乱れ、髪毛は汗ばんだ額の上に垂れていた。ところが被告はそんなことには気づかぬ模様で、自分を越えてあらぬ方をながめている案内人の前にうやうやしげに立ち、ただ自分がここにいることを弁解しようとするのだった。