分からぬは夏の日和と人心
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44Ryou Chrome
2013/10/03 19:21
 Kは抗弁する気が全然なかった。娘の意図は親切なものらしいし、おそらくKの気をまぎらせ、あるいは気分をまとめる機会を彼に与えるためのものだったのだが、手段が間違っていたのだった。
「この人にあなたの笑ったわけを説明してあげなければいけなかったんだわ」と、娘は言った。「ほんとに人を侮辱するものだったわ」
「最後に連れていってあげれば、もっとわるい侮辱だってこの人は許しなさる、と私は思うね」
 Kは何も言わず、一度も顔を上げないで、二人が自分についてまるで事件についてのように論じ合っているのを、我慢していた。それが彼にはいちばん好ましかった。ところが突然、一方の腕に案内係の手、他方のに娘の手を感じた。
「じゃあ立ちなさい、お弱いお方」と、案内係は言った。
「お二人とも、ほんとうにすみません」と、よろこび驚きながらKは言い、ゆっくり立ち上がり、ささえをいちばん必要とする場所に自分のほうから他人の手を持っていった。

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43Ryou Chrome
2013/10/03 19:21
私たち、つまり役人は、しょっちゅう、しかも第一番目に訴訟当事者たちと接触する案内係は、第一印象をよくするために、身なりもスマートでなければならない、と同じように思っています。私たちほかの者は、私をごらんになればすぐおわかりと思いますが、残念ながらたいへん粗末で古風な身なりをしています。着物にお金をかけることなんか、たいして意味もありませんわ、だって私たちはほとんどいつも事務局にいて、ここに寝泊りまでするんですもの。でも、申上げたとおり、案内係はりっぱな着物がいる、と私たちは等しく思っています。ところがその着物は、この点でいくらか変なんですが、お役所からは支給されませんので、私たちはお金を集め――訴訟当事者にも寄付していただき――この人にこんなきれいな着物やまたほかのやを買ったんですわ。今では万事が整って、よい印象を与えることもできるのに、この人ったら笑ってはまた台なしにしてしまい、人を驚かすんですのよ」
「そりゃあそうだが」と、男はあざけるように言った。「君、なぜこの人にわれわれの内幕を洗いざらいしゃべるのか、あるいは全然聞きたくもないのに無理に聞かせるのか、私にはわからないね。いいかい、この人は明らかに自分の用件があってここに来ているんだからね」
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42Ryou Chrome
2013/10/03 19:18
FXの塩漬けユーロ円ショートを損切したいです。
そろそろ下がるだろうと思って、ポジションを取ったユーロ円の塩漬けを損切したいです。
ポジションが多く取られるのを待って、力をためているというのは分かります。
けれど中々、上に抜けないので踏切りがつきません。
FX用資産の2割を超えるようなら、切ってしまおうと決めいます。
今回のを教訓にして、こうなる前に、もう少しFXの取引計画を詰めないといけません。
これまでは、流れや感覚に頼り過ぎていた感があります。
スマホでやっと操作できるようになったばかりですが、頑張っていこうと思います。
際どい所を狙うより、余裕を持ったポジション取りに心がけたいと思います。
やればやるほど魅力的なFXだけに、冷静に取引を進めていくことにしました。
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41Ryou Chrome
2013/09/30 15:04
 兵士はもう機械の掃除を終えて、お粥を缶から出して小鉢の中にそそいだ。
 囚人はそれに気がつくと、もうすっかり元気になったようで、すぐに舌をのばしてお粥を食べようとした。
 兵士はまたもや囚人を押し止めた。お粥はもっと後になってからと決まっていたからだった。だが、あろうことに、兵士自身が汚れた手をつきだして、空腹の囚人の目の前で、お粥を食べ始めた。
 将校は、まもなく我に返った。
「その、あなたを感化しようとか、そういうことではないのです。わかってます、無理ですよね、今、これだけで納得していただこうなんて。それはそうと、機械はいぜん動いておりますし、たとえこいつだけでも、ありさえすれば、動くのです。谷の中にぽつんとこの機械が置いてあるだけでも、こいつは自分で動くのです。ちゃんと最後に死体が、この世のものとは思えないほど安らかに穴へ落ちていくのです。過ぎし日のように、大群衆が穴の周りにひしめきあっていなくとも。昔はね、穴の周りに頑丈な柵を設けなければならなかったんですよ、もうとっくに取り払われましたけどね。」
 旅人は顔を背けて、あてもなく辺りを見回した。
 荒涼とした谷に見入っていると思ったのか、将校は旅人の手をつかんで、注意を自分の方に向けようとした。

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40Ryou Chrome
2013/09/30 15:04
あの頃は、文字を刻む針に腐食液をしたたらせていていました。今ではもう使用が許されてはいません。さて、開始から六時間経ちますと! みんな近くで見たいと言いますが、全員許可するわけにはまいりません。司令官は思慮深いお方でして、とりわけ子どもの願いを聞き入れるべきだとおっしゃりました。私は、職務上いつも最前列に坐ることができました。あるときには、両脇に子どもをかかえながら、しゃがんで見物したこともあります。囚人の苦しみに引きつった顔が、救済され、歓喜に満ちていく様を、大勢の群衆が眺めるのです。ついに遂げられ、そして去っていく正義の光が、我々を煌々と照らす! この一瞬なのだ! 友よ!」
 将校は、まったく周りが見えなくなっていた。
 旅人を抱きしめて、肩に顔をうずめた。
 旅人は困り果てて、何をどうしてよいやら、とりあえず肩のところにいる将校に目を向けた。

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39Ryou Chrome
2013/09/30 15:04
あそこに積み重ねられた籐の肘掛け椅子が、当時の名残なんです。機械はぴかぴかに光って、設置されているのですが、ほぼ毎回、処刑のたびに新しい部品を使っていました。大勢の目の前で――見物人みんなつま先立ちしなければならないくらい、谷にひしめいていて―― 囚人が、司令官じきじきに『まぐわ』の下に寝かされます。見張りは、今でこそ一兵卒の役目でありますが、当時は私、今は裁判官の私がやっていた仕事でして、たいへん光栄なことでありました。そしていよいよ、処刑が始まる! 機械の動作を妨げる不協和音はありません。もはや処刑を見ようとはせず、目をつむって砂の上に寝転がる人もいましたよ。誰もが、今まさに正義が行われているのだと、知っておりました。静寂の中、ただ囚人のため息ばかりが聞こえてきます。フェルトの栓でこもった感じになっていましたが、こんにち、あの機械では、息がつまって、のどの奥から絞り出しているような、あの感慨深いため息はもはや出せないでしょうね。
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38Ryou Chrome
2013/09/30 15:03
 将校が機械に手をやった。
「――朽ち果てようとしているのです! こんなことが、認められてよいのでしょうか! あなたは外国人ですが、ただ数日この島に滞在しているだけですが、それでも! 事は一刻を争います。私の司法権に対して、何らかの策を講じられようとしています。もうすでに、司令部で審議が行われました。私に何も意見を求めることなく、です。それどころか、あなたが今日ここにやってこられたことも、今までのことを考えると、たいへん意味深長なものに思われます。自分でやるのは怖いから、あなたのようなよそ者を送ってきたのです。――以前は、こんなさみしい処刑ではなかった! 執行の前日ともなると、谷中がもう人でいっぱいで、処刑を見物するためだけに、みんなしてやってきたものです。朝早くに、司令官はご婦人方をはべらせてお越しになっていました。ファンファーレがなると、この流刑地全体に緊張が走ります。私が、準備完了を報告すると、身分の高い方々が――つまり、高官は誰もが欠席するわけにはいかないわけで――機械の周りに皆さんもう着席なさっているわけです。

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37Ryou Chrome
2013/09/30 15:03
 将校が旅人に歩み寄った。
 旅人は予感めいたものがあって、一歩後に下がった。
 将校が旅人の手をつかんで、そばに引き寄せた。
「あなたを見込んで、ちょっと話をしたいのですが、よろしいですか?」
「ええ。」
 旅人は目を伏せつつ、話に耳を傾けた。
「この裁判制度と処刑に、今回立ち会うことができたことを、旅人さん、あなたは感謝すべきですよ。しかし、この地にはもはや、高らかに支持を表明する人はいないものと思われます。私が唯一の代表者かつ、先の司令官の意志を継ぐ唯一の人間であるのです。この裁判制度をこれ以上広めようなどとは、考えない方がいいでしょう。今は、ここの制度と機械を維持するだけで精一杯なのです。先の司令官が存命中には、この地にも支持者がたくさんいました。彼の思想的側面は、私もいくらか受け継いでいるつもりなのですが、いかんせん、私には権力というものがありません。その結果、支持する者がいても、私に力がないために、彼らを守ってやることができない。だから大勢いても、みんなそのことを口に出さないのです。たとえば今日、処刑執行の当日に、喫茶店に行って色々話を聞いて回ってご覧なさい。みんな曖昧なことを言うばかりですよ。みんな以前は大声で支持していたのに、現在の司令官の下、新しい考えがはやっている現在では、まったく役に立ちません。これをどう思いますか? ああいう司令官と、それを意のままにするご婦人方のせいで、このような一個の生涯をかけた作品が――」

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36Ryou Chrome
2013/09/30 15:03
 将校が我を忘れて、真鍮の柱をがたがた言わせながら、大声で叫んだ。
「機械を穢されてしまった、これじゃ家畜小屋じゃないか。」
 将校は震える両手を旅人に示して、自分の不幸を伝えようとした。
「私は、何度も、何分も、何時間も、司令官のやつに言ったんだ。処刑の前日には、何も食べされてはいけない、と。だが、今はやりの穏健派というやつは別の意見らしい。司令官つきのご婦人方は、連行される前に甘いものをたらふく喰わせる。これまで臭い魚を食わせてつないできた命に、なぜここで甘いものを食べさせねばならんのだ! 百歩譲ってありうるとしても、ならば私は声を大にして言ってやる、どうして三ヶ月も頼み続けているのに、新しいフェルトひとつ買ってくれないのだ! 誰だって、こんなフェルトをくわえろと言われれば嫌がるさ、なにしろ百人以上の人間がこのフェルトをくわえて死んだんだからな!」
 囚人はうつむいて、気分も落ち着いた様子だった。
 一方そのそばで、兵士は囚人のシャツを雑巾代わりにして、機械を一生懸命きれいにしていた。

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35Ryou Chrome
2013/09/30 15:03
 それに誰も、こんな旅人が、自分の利益のために言った、と誤解する人もいないだろう。囚人は赤の他人だし、同国人でもないし、同情を抱いているからでもない。
 自分は高官たちの書いた紹介状を持っているし、たいへん手厚く迎えられた。その結果、この処刑に招待もされたわけで、それどころか、この裁判に対して何か意見を求めているように思えるふしさえある。
 ありそうなことだと思う。
 あの司令官が、周知の通り、この裁判制度には不支持であり、この将校に対して敵対心に近いものを抱いているというのは、本当かもしれない。
 そのとき旅人は、将校の怒号を聞いた。
 やっとのことで、囚人の口の中にフェルトの栓を押し込んだのに、囚人はこみ上げる吐き気に我慢できなくなって、目を閉じたまま、栓から外したのだった。
 将校があわてて囚人の頭を持ち上げると、頭を穴に向けようとした。
 が、手遅れだった。
 吐瀉物が機械のわきから、地面の方に流れてきた。
「これもみんな、あの司令官のせいだ!」

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